ふたつの卵
「ああ、生まれる」
お妃様が産んだのは卵でした。
毛皮に包んで温められた白い卵からは、珠のような赤ん坊が生まれました。異国からやってきた若く美しいお妃様と同じ、雪の肌と太陽の髪、宝石のまなざしの赤ん坊。国民は七日七晩の祝宴を催したと言います。
ちいさなお姫様は、まるきりお妃様の生き写し。よその国へ嫁ぐのか、婿を迎えるのか。お名前は。記念に植樹を。画家たちが列をなし、お祝いの品は庭園を埋め尽くしたとか。
美しい姫を巡って、お城は毎日大騒ぎ。王様はにこにこと微笑みながら、口にできぬ問いを抱えていました。
「果たして、あの子は本当に私の子なのだろうか」
王様のお腹の奥底に、くろぐろとした疑念の卵が生まれました。
(300文字 お題「卵から生まれ出るもの」)
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