王者の手
すらりとした手を想像していた。客席から見るぶんには白く繊細だったから。
「がっかりした?」
言われ慣れてる、と彼は両手を灯りにかざして開いた。何の変哲もない手で、節が目立って、指が長い。指の腹は平らで、なるほど鍛え上げられたアスリートの手だ。
小学生の頃からバレーは見学、サッカーもキーパーは断って、ひたすらピアノに打ち込む。喧嘩なんてとんでもない、けれど手が血塗れになるほど練習する。
そんなアンバランスな手は白黒の鍵盤の上で自在に踊り、万人を魅了する。私を奏で、くらげみたいに溶かしてしまう。
もっと、と乞われることに慣れきった手。翻弄し、暴きたてる指。
「ううん、ちっとも」
それは、全てを征服する王者の手。
(300文字 お題「節」)
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