サプライズ・キラー

 サプライズって苦手。


 憂鬱もあらわに言われ、むせそうになった。鞄の底に隠してある指輪の存在を見抜いたかのような言葉に、その場凌ぎの相槌が白々しく流れてゆく。


「前にね、フラッシュモブっていうの? あれをやられたことがあって、それ以来だめなんだ」

「実在したんだ、フラッシュモブ」

「インド映画なら良かったのになー」


 それはそれ、これはこれ。ゆとりだの草食系だのさんざん馬鹿にされてきた僕のなけなしの決意は、アイスティーの氷なみに儚く溶けた。


「ところでさ、結婚しようよ」


 窓の外、通りを行き交う車を見つめながら彼女が言う。今度こそ本当にむせた。


「……サプライズは苦手なんじゃ」


 歯を見せる彼女に、指輪はよく似合った。



(300文字 お題「意表をつく」)

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