鍍金

 王様とお妃様は仲睦まじいことで有名です。

 王様の行きすぎた政治をお妃様が憂い、お妃様の度を超えた奢侈を王様が咎め、国は平和でした。


 ある日、王様が言いました。


「その髪飾りはやはりよく似合っているよ。何度もデザインを直させた甲斐があった」


 髪飾りは実家からの贈り物でした。お妃様はおやと思いましたが、黙って頬を染めました。

 またある日、お妃様が言いました。


「この手袋、とても素敵ですわ。あの時買って良うございましたね」


 手袋は王様がいけない遊びをした時に、お相手から贈られたものでした。王様は胸を撫で下ろし、うむと頷きました。



 王様とお妃様は仲睦まじいことで有名です。

 すっかり歪な思い出が露わになるまでは、きっと。



(300文字 お題「食い違う記憶」)

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