夢の向こうに

 基盤に細かなパーツを半田付けする。フラッシュ、スピーカー、USBポート。ノルマは600台。

 私から始まる製造ラインでは、このあと液晶やレンズ、ボディが取り付けられて製品としてのデジカメが完成する。

 21時から始まる勤務が終わる頃には夜も明けていて、みんな黙って目覚めきらない街に帰る。


 同じラインにいるあの人とはろくに言葉も交わさず、帰りのバスでお疲れのメッセージを飛ばすくらい。


 夢のようにふわふわした毎日の中で、確かなものって何だろう。


 新品のデジカメ、連なる既読メッセージ、真昼の生活、次々に人が入れ替わる製造ライン、ブロイラーみたいな工場勤務、それとも。


 夢の向こうに現実はある?

 この夢が終わる日は来るの?



(300文字 お題「夢の終わり」)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る