塩鯖
色よく焼けた塩鯖の皮をはぎ、ぺろりと裏返すや、骨と身をより分ける。マナーなんぞ知るか。食べたいように食べればいい。
淡々と作業を続ける彼の割り箸の先端は、精密機械みたいだった。表情も薄いから、ロボットかもしれないな、なんてたまに思う。
完璧な無表情のまま左手で電卓を叩くしぐさや、箸使いの綺麗さ、そんなところに惹かれたのだった。人間味の薄いところに。
塩鯖などに共感してしまうのは、期待からだろうか。あの手がシーツに横たわるわたしの服をはぎ、裏返し、細やかに身をまさぐることを夢想しているからか。
骨が取り去られた塩鯖が、私の皿に運ばれてきた。そんなに物欲しそうだった?
――そうかもしれない。否定はしない。
(299文字 お題「魚の骨」)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます