中世のフィレンツェを舞台にした異色ミステリー

最新48話までを読んでのレビューになります。
ちなみに物語が佳境に入ってきて面白いところです。

普通のミステリー小説と違うのは、もちろんその時代性と舞台にあります。
誰もが馴染みのない世界観だと思うのですが、魅力的な風景描写、知識に裏打ちされた丁寧な時代説明、そしてなにより魅力的な登場人物により一気に世界に引き込まれます。
とくに登場人物は当時の市井の人々の生活、思考、などまでリアルに描かれており、とても読み応えがあると同時に魅力的な人物が多数登場します。

これらの人々をつないでいくのがミステリーパートです。
宝飾職人でなんともだらしない感じだけど、なにやら鋭い知性を感じさせるジャンニ親方。
若くて無鉄砲で、それでも正義感にあふれた警官のレンツォ。
この二人がフィレンツェの隅々まで歩き、走り、沢山の人と出会い、話を聞きながら、無茶したり、のらりくらりとしながら、そしてたまに危ない目にあいながら、殺人事件の真相へと迫っていきます。

張り巡らされた伏線を考える楽しみ、そこに暮らす人々の生活を垣間見る楽しみ、登場人物の人間模様が織りなすドラマの楽しみ。
それらを詰め込んだ骨太な物語でありながらも、軽快に楽しく読ませる文章力の鮮やかさも素晴らしいです。

物語はいよいよ佳境へ。
ぜひ連載中のうちに読み始めて欲しい作品です。

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