汝、還れや、始原の樹林へ

自分自身も書く人間であるからには言葉を尽くしてこの物語について語りたいところではありますが、どうにも、揺さぶられすぎると、脳の言語をつかさどる部分もどうにかなってしまうようです。この一説を目にする度に涙が止まりません。

モミとサルヤナギの木立を歩いて行け
よからぬ考えを抱かず、滑らかな心で歩いて行け……

長いとか短いとか分量とかあんまり考えないでください。時間というのは気づいたら溶けているもので、それ以上でもそれ以下でもありません。取り敢えず読んでください。一緒にタイガへ行きましょう。悲しくても辛くても、ムサ(人間)のことわりとしがらみに巻きつかれようとも、どれだけ絶望に塗れてケレ(悪霊)と成り果てようとも、変わらずにあまたの命を抱くあのタイガへ。
間違いなく、すべてが、きっとあなたの目に、耳に、鼻に……五感に訴えかけてくるでしょう。あなたはそこにいる。そうして木々の間を駆け、水に触れ、冷たい空気に体を震わせ、生きていく。あなたも世界の一部となって、共に同じ時を経ていくのです。

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