熱くのめり込めるストーリーです!
弥生時代という資料の少ない時代を表現するにあまりある作者様の深い歴史知識と
、それに加味された想像力は素晴らしく、生活や戦の様子が目に見えるように伝わってきます。
ストーリーのそこここに挟まれる作者の雑学も面白く、しかも本筋を邪魔することなく挿入されているのも良かったです。
クニ作りにかける人々の情熱が、その熱さが伝わってきます。それぞれの立場、それぞれの思い。違う立場からみる世界観とそれぞれの正義。深く考えさせられます。
そして戦闘シーンの熱さがまた素晴らしい! 戦そのものの熱さとその背景の人々の思いが重なって、ぐいぐいひきこまれます!
そしてラストにタイトル回収。いや、再回収というべきか? なんともありふれた言葉ですが、鳥肌がたつ感じ。
『闇でよい 恐れるな』というこのキーワードも心惹かれました。
歴史に疎い私ですが、第一話から引きずり込まれて魅了され、気が付けば登場人物達と共にこの世界を駆け抜けておりました。
まだ国という概念が朧であった弥生時代を舞台にした、壮大な歴史小説です。
物語はヤマトの女王であるヒメミコ・サナと彼女に仕えるマヒロを主体に進んでいきますが、登場する人物一人一人に『守るべきもの』『欲する未来』『希う夢』があります。
それを命の核として燃やし、身を焦がしても尚戦う彼らの姿に、自分の魂まで震わされるような心地がしました。
ともすれば、息することすら忘れかけるほど緊迫したシーンも続きますが、時折挿入される作者様の見解や思いがこれまた良いアクセントに。
たまにフフッと微笑んでしまうようなお話もあり、そちらも含めて大変楽しく読ませていただきました。
核の隅々まで燃やし尽くし、炎が消えた後に残るのは闇。
けれど恐れることはありません。
この闇もまた、終わりの始まりであると、彼らは教えてくれます。
彼らが踏み締め作り上げた道を、また誰かが継ぎ、脈々と続いていく――。
今作は三部作の第一部ということですが、読み終えた今、闇に視界を塞がれ覚束ないこの道の先を是非とも見極めてみたいという欲求が、既に胸に満ち満ちております。
闇でよい。恐れるな。
そんな彼らの声を背に、続きも楽しませていただこうと思います。
読み始める前に「絶対に後悔させません」の一言を見た記憶があったのですが、読後に作品紹介文を改めてみると書いてません。耄碌した脳味噌の記憶障害かなあ。でも、兎に角、37万文字の超長編ながら、後悔してません。面白かったです。
閲覧者が37万文字から推察する通り、物語の中では長い時間が経過します。その過程で国家が形成されていくプロセスが丁寧に描かれています。私は、こういう歴史物が好きです。作者の構想力が問われるわけですが、見事に期待に応えています。
小見出しの一つに日本古代史のキーワード”倭国大乱”が有る通り、読者を飽きさせないように戦争を縦糸にして物語は紡がれます。
私の尊敬する田中芳樹先生の『銀河英雄伝説』でヤン・ウェンリーが愛弟子ユリアンに「戦略・戦術・武術」の3段階を講釈するのですが、本作品は戦術・武術レベルの描写を、読者が動きをイメージするに十分な詳しさで描き出しています。
登場する武将達の得意とする飛び道具も異なり、打ち合いの組み合わせを違える事でイメージを湧かせ易くする効果を発揮しています。
特筆すべきは、戦術レベルの描写が、読み進めるに従い何度も合戦を繰り広げるわけですが、徐々にステップアップしているのを実感するわけですよ。「進化しているなあ」と感心しながら読み進めました。
因みに、ヤン・ウェンリーの定義する戦略は有りません。ヤンは戦略を「誰と組んで誰を攻めるか?」と定義しており、それには3つ以上の勢力が必要です。作者は魏志倭人伝に記述のある「邪馬台国と狗奴国の戦い」をベースとした節があり、大きくは2つの勢力しか登場しないからです。
まあ、37万文字を大した苦も無く読了できるわけですが、相対的に閲覧者の少ない歴史ジャンルで、しかも半年強の短期間で70以上の星を集めた事は凄いと思います。
ハードノベルとライトノベルの中間よりはハード側だと私自身は感じましたが、カクヨム界の平均的閲覧者からはライト側に整理されるのだろうか? もし作者の真意がハード側に有ったとしたら、私とは好みが合うので語らってみたいものだと思いました。
それでも私の評価が星2つなのは何故か?
本作品は邪馬台国畿内説に立脚しているのですが、私は九州北部説の信奉者なのです。作者は釈然としないでしょうなあ。
一寸先は闇。
未来も、明日も、下手をしたら一瞬後のことも。誰にもわからないけれど、それでも恐れることなく、己のために、誰かのために、クニのために、進んでいく数多の人々。
想いが重なり、火花を散らし、蛇のように這う、その命達の生き様が、軽妙であり奥行きと熱さの感じられる筆致で描かれていくのは実に圧巻です。
登場人物の諸々については言うまでもなく皆愛しい人々であります。
ところで、とある事情で資料集めを行うその折り、司馬遼太郎作品に関しては何作か触れたことがあって、非常に楽しく、面白く読んでいたことがあるのですが、それを彷彿とさせる語り口も心地好いのです。
個人が色濃く滲んでくる文章をこうも自然に書けるのは見事。
それであるからこそ、最後の哀しくも美しい大立ち回りも映えるというもの、是非、これから読まれる皆様におかれましては、マヒロの如く、黒雷の背に乗って、最後まで一気に駆け抜けて欲しい。
率直な感想を申し上げると、『すごい作品』でした。
実際存在したかのような時代背景、登場人物。どれをとっても素晴らしかった。
この物語は弥生時代に焦点を置かれた作品でしたが、物語の序盤からその世界に引きずり込まれます。全ての状況が鮮明にイメージとして蘇り、全く当時の背景を知らない無知な私ですら理解できてしまう内容の数々。
これぞ国づくり。
そして、生きるということなんでしょう。
クニのために戦う。
ですがそれは同時に、サナのために戦う戦士たちの命をかけた紡ぎあい。
クニを繋ぐ、命を繋ぐというのは、こういうことなのだと強く感じました。
そして驚きなのが、これが作者様の処女作であるということ。表現力に世界観、どれをとってもレベルが高い。書き手が学ぶべきこともたくさんあるため、全ての方に一度は目を通して頂きたい傑作である。
ラストは涙なしでは語れません。悔しい、だけどどこか納得してしまう。
こうして時代は変わっていくのかもしれません。誰も知らない、見ていないところで命を削る者たちがいる。
作者様の筆力に脱帽です。
日本人ならば誰でも一度はその名を耳にし、雄大な時代への畏敬と憧憬に胸を躍らせたことはある弥生時代。「女王の名」は己が命を燃やしながらも大切なもののために生き、時に雄々しく、時に気高く、時に悲しく、そしていずれも美しく散っていった者たちの物語です。
作者さまの緻密な知識と確かな文章力で裏打ちされ、支えられた物語の、凄まじいまでのエネルギー。滾る熱は読者である私たちをも呑みこみ、物語に引き込みます。
私たちの祖先が生きた古代が、こんなにも横溢する生命の清らかな力に溢れていたとは思わなかった。女王がマヒロに彼女の名を告げるまでは。
この熱量。「火」を随所に取り入れた熱い描写と、冷徹なまでに傍観者となり描く作者の視点。
夢中になってしまい、休日を利用し一気読みをしてしまいました。
年甲斐もなく、かつて学生時代に通学バスや電車の中で好きな物語を食い入るように読んでいた頃の記憶が蘇りました。
とてもピュアで、そして情熱的な作品でした。
女王たるサナと、英雄マヒロを中心に、その周囲の豪傑たちや女性たちが、目の前に実在するかのように活写されています。
ある出来事について「この人物なら、こう考えるだろうな」と想像を巡らせることも楽しみの一つですが、この作品の登場人物達は見事なまでにその期待を裏切らず、確固たる人格と意思を持って困難や絶望にあたり、国家としてのヤマトやクナを支え、明日を繋いでゆきます。
敵であるはずの人物達にも上手くスポットが当てられており、それがまた魅力的で、敵イコール悪ではなく、時間の流れにより変遷してゆくものであるという作者の持論に目を洗われる思いです。
歴史とは、常に変動するもの。
「こうである」という規定を行ってはじめて、歴史が進行してゆく。作者の没入はやがて読者を巻き込み、登場人物たちの強い意思を追いかけることに喜びを感じることを決定付けます。
単一的な視点ではなく、己の内に眠る何かを呼び覚ましてくれるような会心の一作を求める読者にこそ、お勧めしたいと思います。
我が国の黎明期ーー人々は定住し、稲作を始めました。やがて、彼らはクニを創り、後世につづく社会制度を築いていきます。
これは、そんな時代、ヤマトと呼ばれたクニに産まれた一人のヒメミコ・サナと、彼女を護るべく運命付けられた少年マヒロの物語です。
諍いをきっかけに、隣国の王族の少年タクがヤマトに入り、やがてサナの妹マオカに取りいります。史書に『大乱』と記録された大いなる乱世に、サナたちは呑み込まれていきます。サナを、大切なヤマトのひとびとを護るため、『神殺し』と言われるほど強くなっていくマヒロ。
西方の大国クナやイヅモをめぐる陰謀と激しい戦闘に、生命を燃やし、散っていく男たち。そんな彼らを愛する女たち……。
「わたしはヤマトで、ヤマトはわたしだ」と、繰り返していたサナが、物語の果てに告げた名と、伝えられる名の意味を知った時ーー後世に生きる読者の私は、感動させられました。
壮大な英雄譚であり、愛の物語です。歴史好きにお薦めします。