女王の名

作者 増黒 豊

90

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★★★ Excellent!!!

歴史に疎い私ですが、第一話から引きずり込まれて魅了され、気が付けば登場人物達と共にこの世界を駆け抜けておりました。

まだ国という概念が朧であった弥生時代を舞台にした、壮大な歴史小説です。

物語はヤマトの女王であるヒメミコ・サナと彼女に仕えるマヒロを主体に進んでいきますが、登場する人物一人一人に『守るべきもの』『欲する未来』『希う夢』があります。

それを命の核として燃やし、身を焦がしても尚戦う彼らの姿に、自分の魂まで震わされるような心地がしました。

ともすれば、息することすら忘れかけるほど緊迫したシーンも続きますが、時折挿入される作者様の見解や思いがこれまた良いアクセントに。

たまにフフッと微笑んでしまうようなお話もあり、そちらも含めて大変楽しく読ませていただきました。

核の隅々まで燃やし尽くし、炎が消えた後に残るのは闇。

けれど恐れることはありません。

この闇もまた、終わりの始まりであると、彼らは教えてくれます。

彼らが踏み締め作り上げた道を、また誰かが継ぎ、脈々と続いていく――。

今作は三部作の第一部ということですが、読み終えた今、闇に視界を塞がれ覚束ないこの道の先を是非とも見極めてみたいという欲求が、既に胸に満ち満ちております。

闇でよい。恐れるな。
そんな彼らの声を背に、続きも楽しませていただこうと思います。

★★ Very Good!!

読み始める前に「絶対に後悔させません」の一言を見た記憶があったのですが、読後に作品紹介文を改めてみると書いてません。耄碌した脳味噌の記憶障害かなあ。でも、兎に角、37万文字の超長編ながら、後悔してません。面白かったです。
閲覧者が37万文字から推察する通り、物語の中では長い時間が経過します。その過程で国家が形成されていくプロセスが丁寧に描かれています。私は、こういう歴史物が好きです。作者の構想力が問われるわけですが、見事に期待に応えています。
小見出しの一つに日本古代史のキーワード”倭国大乱”が有る通り、読者を飽きさせないように戦争を縦糸にして物語は紡がれます。
私の尊敬する田中芳樹先生の『銀河英雄伝説』でヤン・ウェンリーが愛弟子ユリアンに「戦略・戦術・武術」の3段階を講釈するのですが、本作品は戦術・武術レベルの描写を、読者が動きをイメージするに十分な詳しさで描き出しています。
登場する武将達の得意とする飛び道具も異なり、打ち合いの組み合わせを違える事でイメージを湧かせ易くする効果を発揮しています。
特筆すべきは、戦術レベルの描写が、読み進めるに従い何度も合戦を繰り広げるわけですが、徐々にステップアップしているのを実感するわけですよ。「進化しているなあ」と感心しながら読み進めました。
因みに、ヤン・ウェンリーの定義する戦略は有りません。ヤンは戦略を「誰と組んで誰を攻めるか?」と定義しており、それには3つ以上の勢力が必要です。作者は魏志倭人伝に記述のある「邪馬台国と狗奴国の戦い」をベースとした節があり、大きくは2つの勢力しか登場しないからです。
まあ、37万文字を大した苦も無く読了できるわけですが、相対的に閲覧者の少ない歴史ジャンルで、しかも半年強の短期間で70以上の星を集めた事は凄いと思います。
ハードノベルとライトノベルの中間よりはハード側だと私自身は感じましたが、カク… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

一寸先は闇。
未来も、明日も、下手をしたら一瞬後のことも。誰にもわからないけれど、それでも恐れることなく、己のために、誰かのために、クニのために、進んでいく数多の人々。
想いが重なり、火花を散らし、蛇のように這う、その命達の生き様が、軽妙であり奥行きと熱さの感じられる筆致で描かれていくのは実に圧巻です。
登場人物の諸々については言うまでもなく皆愛しい人々であります。

ところで、とある事情で資料集めを行うその折り、司馬遼太郎作品に関しては何作か触れたことがあって、非常に楽しく、面白く読んでいたことがあるのですが、それを彷彿とさせる語り口も心地好いのです。
個人が色濃く滲んでくる文章をこうも自然に書けるのは見事。
それであるからこそ、最後の哀しくも美しい大立ち回りも映えるというもの、是非、これから読まれる皆様におかれましては、マヒロの如く、黒雷の背に乗って、最後まで一気に駆け抜けて欲しい。

★★★ Excellent!!!

時代小説・歴史小説で圧倒的に刊行数が多く人気の時代は、戦国から幕末までなのが事実だ。その分、他の時代の小説を読みたい読者は飢えている。本作は弥生時代が舞台。なにせ資料もそうない時代だけに、著者の想像力がものを言う。

いろいろな方向性が考えられるわけだが、本作は戦記風の内容としている。しかもけっこう大規模な戦闘を描くので、せせこまい日本の話というより、ちょっと中国の古史ぽい風合いを感じて興味深い。個人的には、最終話近くでタイトルを回収する構成に感心した。

★★★ Excellent!!!

率直な感想を申し上げると、『すごい作品』でした。
実際存在したかのような時代背景、登場人物。どれをとっても素晴らしかった。

この物語は弥生時代に焦点を置かれた作品でしたが、物語の序盤からその世界に引きずり込まれます。全ての状況が鮮明にイメージとして蘇り、全く当時の背景を知らない無知な私ですら理解できてしまう内容の数々。

これぞ国づくり。
そして、生きるということなんでしょう。

クニのために戦う。
ですがそれは同時に、サナのために戦う戦士たちの命をかけた紡ぎあい。
クニを繋ぐ、命を繋ぐというのは、こういうことなのだと強く感じました。

そして驚きなのが、これが作者様の処女作であるということ。表現力に世界観、どれをとってもレベルが高い。書き手が学ぶべきこともたくさんあるため、全ての方に一度は目を通して頂きたい傑作である。

ラストは涙なしでは語れません。悔しい、だけどどこか納得してしまう。
こうして時代は変わっていくのかもしれません。誰も知らない、見ていないところで命を削る者たちがいる。
作者様の筆力に脱帽です。

★★★ Excellent!!!

日本人ならば誰でも一度はその名を耳にし、雄大な時代への畏敬と憧憬に胸を躍らせたことはある弥生時代。「女王の名」は己が命を燃やしながらも大切なもののために生き、時に雄々しく、時に気高く、時に悲しく、そしていずれも美しく散っていった者たちの物語です。
作者さまの緻密な知識と確かな文章力で裏打ちされ、支えられた物語の、凄まじいまでのエネルギー。滾る熱は読者である私たちをも呑みこみ、物語に引き込みます。
私たちの祖先が生きた古代が、こんなにも横溢する生命の清らかな力に溢れていたとは思わなかった。女王がマヒロに彼女の名を告げるまでは。

★★★ Excellent!!!

この熱量。「火」を随所に取り入れた熱い描写と、冷徹なまでに傍観者となり描く作者の視点。
夢中になってしまい、休日を利用し一気読みをしてしまいました。
年甲斐もなく、かつて学生時代に通学バスや電車の中で好きな物語を食い入るように読んでいた頃の記憶が蘇りました。
とてもピュアで、そして情熱的な作品でした。

女王たるサナと、英雄マヒロを中心に、その周囲の豪傑たちや女性たちが、目の前に実在するかのように活写されています。
ある出来事について「この人物なら、こう考えるだろうな」と想像を巡らせることも楽しみの一つですが、この作品の登場人物達は見事なまでにその期待を裏切らず、確固たる人格と意思を持って困難や絶望にあたり、国家としてのヤマトやクナを支え、明日を繋いでゆきます。

敵であるはずの人物達にも上手くスポットが当てられており、それがまた魅力的で、敵イコール悪ではなく、時間の流れにより変遷してゆくものであるという作者の持論に目を洗われる思いです。

歴史とは、常に変動するもの。
「こうである」という規定を行ってはじめて、歴史が進行してゆく。作者の没入はやがて読者を巻き込み、登場人物たちの強い意思を追いかけることに喜びを感じることを決定付けます。

単一的な視点ではなく、己の内に眠る何かを呼び覚ましてくれるような会心の一作を求める読者にこそ、お勧めしたいと思います。

★★★ Excellent!!!

我が国の黎明期ーー人々は定住し、稲作を始めました。やがて、彼らはクニを創り、後世につづく社会制度を築いていきます。
これは、そんな時代、ヤマトと呼ばれたクニに産まれた一人のヒメミコ・サナと、彼女を護るべく運命付けられた少年マヒロの物語です。

諍いをきっかけに、隣国の王族の少年タクがヤマトに入り、やがてサナの妹マオカに取りいります。史書に『大乱』と記録された大いなる乱世に、サナたちは呑み込まれていきます。サナを、大切なヤマトのひとびとを護るため、『神殺し』と言われるほど強くなっていくマヒロ。
西方の大国クナやイヅモをめぐる陰謀と激しい戦闘に、生命を燃やし、散っていく男たち。そんな彼らを愛する女たち……。
「わたしはヤマトで、ヤマトはわたしだ」と、繰り返していたサナが、物語の果てに告げた名と、伝えられる名の意味を知った時ーー後世に生きる読者の私は、感動させられました。

壮大な英雄譚であり、愛の物語です。歴史好きにお薦めします。

★★★ Excellent!!!

歴史小説でも滅多に扱われない弥生時代を舞台にした作品です。
歴史と授業でさらっと教わりますが、弥生時代の生活を想像することは、あまりなかったと思います。
作者様の歴史知識と表現力が素晴らしいです。
名前なら誰もが知っている“あの人”と、取り巻く人物達も魅力的です。
サナとマヒロの絆も良いのですが、マヒロとナナシの関係も目が離せません。
好きな登場人物を見つけて応援するも良し、手に汗握る戦に没頭するも良し。
暑い夏に、熱い物語はいかがですか?

★★★ Excellent!!!

サナは数あるヒメミコの一人でした。

かなり特別で個性的でした。

そのサナを取り巻く人々、取り分け、男の物語です。

よく知られている人物も登場します。

少し、性的に驚いた事もありました。

時代の違いはあっても、辛くなかったかと心配しました。

文中、私には難しい用語があり、又、歴史的用語もありますが、登場人物が片仮名により音を表記してあるため、浮き立って、人間模様が読み取れます。

ヤマトは今後どうなるのでしょうか。

行く末は物語とともに。

おすすめです。

★★★ Excellent!!!

弥生時代、我々の住まうこの国の、「国」という形が出来始めたころの物語。
淡々と、しかし燃えるような筆致で描かれる古の人々の思いに、日の本の国の子である読者の血が、騒いでおさまらぬこと請け合いです。
まさに彼らが我々の祖であると、確信し喜びを覚えます。
この壮大で力強い過去からのメッセージ、ぜひ皆さんに受け取っていただきたい!
名作です。

★★★ Excellent!!!

確かな筆致と造詣深い考証により、奥深いストーリーに冒頭から惹き込まれてしまいます。
日本史の教科書などでも登場するような、我々にとって馴染み深い単語が作中の随所にちりばめられていて、遠い時代のお話なのに親しみやすく感じられるところも魅力的です。
特に日本の歴史や昔の文化などに興味のある方には是非、オススメしたい作品となっております……!