フッと思う。こんな後継者の愛憎感情が日本正史から卑弥呼を消したのかも。

読み始める前に「絶対に後悔させません」の一言を見た記憶があったのですが、読後に作品紹介文を改めてみると書いてません。耄碌した脳味噌の記憶障害かなあ。でも、兎に角、37万文字の超長編ながら、後悔してません。面白かったです。
閲覧者が37万文字から推察する通り、物語の中では長い時間が経過します。その過程で国家が形成されていくプロセスが丁寧に描かれています。私は、こういう歴史物が好きです。作者の構想力が問われるわけですが、見事に期待に応えています。
小見出しの一つに日本古代史のキーワード”倭国大乱”が有る通り、読者を飽きさせないように戦争を縦糸にして物語は紡がれます。
私の尊敬する田中芳樹先生の『銀河英雄伝説』でヤン・ウェンリーが愛弟子ユリアンに「戦略・戦術・武術」の3段階を講釈するのですが、本作品は戦術・武術レベルの描写を、読者が動きをイメージするに十分な詳しさで描き出しています。
登場する武将達の得意とする飛び道具も異なり、打ち合いの組み合わせを違える事でイメージを湧かせ易くする効果を発揮しています。
特筆すべきは、戦術レベルの描写が、読み進めるに従い何度も合戦を繰り広げるわけですが、徐々にステップアップしているのを実感するわけですよ。「進化しているなあ」と感心しながら読み進めました。
因みに、ヤン・ウェンリーの定義する戦略は有りません。ヤンは戦略を「誰と組んで誰を攻めるか?」と定義しており、それには3つ以上の勢力が必要です。作者は魏志倭人伝に記述のある「邪馬台国と狗奴国の戦い」をベースとした節があり、大きくは2つの勢力しか登場しないからです。
まあ、37万文字を大した苦も無く読了できるわけですが、相対的に閲覧者の少ない歴史ジャンルで、しかも半年強の短期間で70以上の星を集めた事は凄いと思います。
ハードノベルとライトノベルの中間よりはハード側だと私自身は感じましたが、カクヨム界の平均的閲覧者からはライト側に整理されるのだろうか? もし作者の真意がハード側に有ったとしたら、私とは好みが合うので語らってみたいものだと思いました。
それでも私の評価が星2つなのは何故か?
本作品は邪馬台国畿内説に立脚しているのですが、私は九州北部説の信奉者なのです。作者は釈然としないでしょうなあ。

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