女王の名

作者 増黒 豊

一気読み推奨。

  • ★★★ Excellent!!!

この熱量。「火」を随所に取り入れた熱い描写と、冷徹なまでに傍観者となり描く作者の視点。
夢中になってしまい、休日を利用し一気読みをしてしまいました。
年甲斐もなく、かつて学生時代に通学バスや電車の中で好きな物語を食い入るように読んでいた頃の記憶が蘇りました。
とてもピュアで、そして情熱的な作品でした。

女王たるサナと、英雄マヒロを中心に、その周囲の豪傑たちや女性たちが、目の前に実在するかのように活写されています。
ある出来事について「この人物なら、こう考えるだろうな」と想像を巡らせることも楽しみの一つですが、この作品の登場人物達は見事なまでにその期待を裏切らず、確固たる人格と意思を持って困難や絶望にあたり、国家としてのヤマトやクナを支え、明日を繋いでゆきます。

敵であるはずの人物達にも上手くスポットが当てられており、それがまた魅力的で、敵イコール悪ではなく、時間の流れにより変遷してゆくものであるという作者の持論に目を洗われる思いです。

歴史とは、常に変動するもの。
「こうである」という規定を行ってはじめて、歴史が進行してゆく。作者の没入はやがて読者を巻き込み、登場人物たちの強い意思を追いかけることに喜びを感じることを決定付けます。

単一的な視点ではなく、己の内に眠る何かを呼び覚ましてくれるような会心の一作を求める読者にこそ、お勧めしたいと思います。

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