紅の蓮

作者 増黒 豊

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40人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

この物語を読んで、『蓮葉の濁りに染まぬ心もて、なにかは露を玉と欺く』という古今集の和歌を思い出しました。

何物にも染まらぬ、無垢な心。
空っぽに見えて、奥底にはどんな熱にも炎にも曲がらぬ強さを秘めた美しい魂。

ヒロインである丹羽しな子には、悲しい過去と炎を操る能力、それしかありません。
けれど、ただ流されるがままに生きているわけではなく、素直に命令に従い、暗殺業をこなしつつも、彼女の心は確かに動き、生くべき道を見出そうと模索しています。

華麗なるアクションシーンの中にあるからこそ、より映えるしな子の繊細な心理描写。

様々なものを失っても痛みを感じないから強いのではない、失う代わりに様々なものを得、それを守ろうとするから強いしな子の姿には、憧憬以上に神々しさすら覚えました。

紅蓮の濁りに染まぬ心もて、なにかは虚ろの炎と欺かぬ――哀しく切なく、しかし美しく気高い魂が描かれた物語です。

★★★ Excellent!!!

『女王の名』で衝撃のデビューを果たした鬼才。
次に執筆したのは『紅の蓮』――

もうこれは、すごい世界。
その一言に尽きます。

余計な表現は一切なく、シンプルにまとめられた構造。
私が一番魅力を感じているのは、登場する人物たちの会話。
何となくの会話もある中に、とても深い意味が込められている。
誰しもが思いつくことのないコミュニケーションの内容は、読むものを魅了するだけでなく、書き手が学ぶ点がありすぎる。

おもしろい作品、書き過ぎですよ(笑)
増黒さんの描くファンタジー、もっともっと読みたい。

ありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

紅蓮の炎に包まれた悲しい過去が、主人公・しな子に炎を司る不思議な力を与え、彼女を国家最高機密の人間兵器へと変貌させていく――。

そんな仄暗いシーンから始まる本作品は、近未来の日本を舞台にしたダークファンタジーでありながら、炎の使い手・しな子と、国家機関『ライナーノーツ』の職員・赤部が織り成す濃厚なヒューマンドラマであるところが最大の魅力です。

ファンタジー部分では、特別な力を持つがゆえにしな子が国家的暗殺者に仕立て上げられるという設定もさることながら、超人的な能力を駆使した暗殺シーンは闇によく映え、体と体がぶつかり合うバトルの場面は速さと重みが程よく紡がれるなど、見た目の痛々しさとともにある種の爽快感を覚えます。

そんなファンタジックな世界で、立派な一暗殺者となったしな子は、粛々と任務をこなしていく過程でさまざまな葛藤を抱き、自分という存在と闘っていきます。
殺せと言われたから殺すのか。命とは何なのか。何を守りたいのか。誰と、どのように生きていくのが正しいのか。
自分を受け入れてくれた人を狙い、自分を慕ってくれた子を失い、新たな命の誕生を前に悩み……。

それでも決して振り返らない強さと、自分らしさを象徴するファッションにこだわり続けるしな子の姿は、まさしく人間そのもの。
彼女のパートナー・赤部が、組織の職員でありながらしな子の兵器化に疑問を持ち、しな子を闇の中から救いだそうと奔走するのは、そんなしな子の人間味に惹かれたから。しな子と赤部の縮まり切らない、付かず離れずの絶妙な距離感が、全体的に仄暗いこの物語に色彩を与える良い素材として機能しているように感じました。


丹羽しな子は、血の通った一人の女性です。
要人暗殺に従事する彼女の圧倒的な『生』を、ぜひ貴方の心で感じてみてください。
生きるとは何か――そんな根源的な命題と向き合う時間を、この物語は与えてくれるので… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

炎を操る能力者・丹羽しな子。
国家機関「ライナーノーツ」に所属し、パートナーの赤部と共に、要人暗殺の任務を遂行する日々。

徹底的に刈り込んだ文章はまさにハードボイルドそのもの。
余計な装飾語を交えることなく、畳み掛けるように連ねられた短文が、却って登場人物たちの心理の動きを際立たせています。

曖昧なアイデンティティの中で、己の「個」に通じる何かを掴みかけては見失い、それでも淡々と仕事を続けるしな子。
兵器としての彼女をサポートしつつ、人間としての彼女を守ることを心に誓い、置かれた状況と自分の信念との齟齬に葛藤する赤部。

互いに寄りかかり過ぎない、それぞれ個でありながらも強い絆で結ばれた、純粋なる「パートナー」としての関係。
二人が男女の関係であったなら、もっと話は単純だったのかも知れません。
そのソリッドな描かれ方が実に見事で、この殺伐とした物語に絶妙な「人間臭さ」というスパイスを与えています。

組織を裏切り、窮地に立たされた二人。
彼らの戦いから、ますます目が離せません。

★★★ Excellent!!!

同先生のウラガーン史記目録のついでに読みに来ました。こちらはうってかわって、ライトな内容で更に幅広い層に人気が出そうです。

2020年代の近未来の東京を舞台に超能力、特務機関、など陰謀の臭いがプンプンする題材が目白押し。今のところド派手な戦闘シーンはありませんが、手をかざし気合の声と共に炎を操ったりせず、「見る」ことで能力を発現させるストイックさが何とも良い。きっと、ジャージのポケットに手を入れたまま能力を発揮するんでしょうね。

増黒先生の作品において人物の作り込みはどれも超逸品ですが、今回は更に細かなキャラクター像が設定されており、今まで映画っぽい作品を多く書かれていた中、はじめてアニメっぽくもあるキャラクターであると感じました。

おかっぱにメッシュヘアー、リングピアス、三本ラインのジャージ(商標への配慮も見られ、流石です笑)、星のマークのスニーカー、と、上から下まで色白で細身のしな子の姿を舐めるように眺める、なんとも言えない良い気分です(笑)

たまには、ちょっと強めのエロスもいいですね。
申し訳ない、こんなことばかりを書いてしまって。
全て、しな子の色気のせいです。
ファンになりましたね。完全に。

しな子と紗和のシーン、
「全然、似合わない」
と言いながら紗和がしな子のピアスを触るシーン、ヤバいです。

増黒先生の世界は、深い…(笑)
乱文、失礼しました!