丹羽しな子は振り返らない——紅蓮の炎がその心を灼き尽くすから。

炎を操る能力者・丹羽しな子。
国家機関「ライナーノーツ」に所属し、パートナーの赤部と共に、要人暗殺の任務を遂行する日々。

徹底的に刈り込んだ文章はまさにハードボイルドそのもの。
余計な装飾語を交えることなく、畳み掛けるように連ねられた短文が、却って登場人物たちの心理の動きを際立たせています。

曖昧なアイデンティティの中で、己の「個」に通じる何かを掴みかけては見失い、それでも淡々と仕事を続けるしな子。
兵器としての彼女をサポートしつつ、人間としての彼女を守ることを心に誓い、置かれた状況と自分の信念との齟齬に葛藤する赤部。

互いに寄りかかり過ぎない、それぞれ個でありながらも強い絆で結ばれた、純粋なる「パートナー」としての関係。
二人が男女の関係であったなら、もっと話は単純だったのかも知れません。
そのソリッドな描かれ方が実に見事で、この殺伐とした物語に絶妙な「人間臭さ」というスパイスを与えています。

組織を裏切り、窮地に立たされた二人。
彼らの戦いから、ますます目が離せません。

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