己の生を生き、己の生を死ぬ――魂の核に在る想いのままに

歴史に疎い私ですが、第一話から引きずり込まれて魅了され、気が付けば登場人物達と共にこの世界を駆け抜けておりました。

まだ国という概念が朧であった弥生時代を舞台にした、壮大な歴史小説です。

物語はヤマトの女王であるヒメミコ・サナと彼女に仕えるマヒロを主体に進んでいきますが、登場する人物一人一人に『守るべきもの』『欲する未来』『希う夢』があります。

それを命の核として燃やし、身を焦がしても尚戦う彼らの姿に、自分の魂まで震わされるような心地がしました。

ともすれば、息することすら忘れかけるほど緊迫したシーンも続きますが、時折挿入される作者様の見解や思いがこれまた良いアクセントに。

たまにフフッと微笑んでしまうようなお話もあり、そちらも含めて大変楽しく読ませていただきました。

核の隅々まで燃やし尽くし、炎が消えた後に残るのは闇。

けれど恐れることはありません。

この闇もまた、終わりの始まりであると、彼らは教えてくれます。

彼らが踏み締め作り上げた道を、また誰かが継ぎ、脈々と続いていく――。

今作は三部作の第一部ということですが、読み終えた今、闇に視界を塞がれ覚束ないこの道の先を是非とも見極めてみたいという欲求が、既に胸に満ち満ちております。

闇でよい。恐れるな。
そんな彼らの声を背に、続きも楽しませていただこうと思います。

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