珠玉の言葉があふれる物語の奥にあるものは――

 命すら消耗する世界。
 もはや、あり得ないとは言い切れない現実。

 類まれな言葉の響きが美しいからこそ、世界が抱えた矛盾が浮き彫りにされている。

 本当に不思議なことだけど、この物語そのものが矛盾を抱えている。


 語り手となる主人公【ホムラ】が連ねる珠玉の言葉たちの奥にあるものは、決して美しいものなんかではない。
 はじめは無機質な冷たさすら感じた物語が、気がつけばすぐ側に感じられるような矛盾。

 困ったことに、どんな結末が待っていようと、受け入れなくてはいけない気持ちにさせられている。

 きっと、そう思う読者は私だけではないはずだ。
 ぜひ、まだ読んでいない方も、騙されたと思って魅了されてほしいです。

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