閉鎖的な田舎、それも警察がすぐに駆けつけられないような隔絶された寒村。
村を見下ろすようにどんと構えた巨大な洋館。
そんな洋館に負けないような莫大な資産を抱える古い一族。
産婆を生業にしていたという一族にまつわる古いしきたり。
それから、あの遠野地方。
家を出た一族の長男の憂鬱な帰還。
――因習村のホラーが始まりそうな舞台で、年老いた当主の死を発端に起こったのは、怪異ではなく凄惨な連続殺人事件。
隔絶された寒村で起きる、由緒ある一族の遺産を巡る殺人事件。
王道ですが、令和でもまったく違和感なく古臭く感じさせない面白さ!!それが、本作の魅力だと思います!!
当主の屈折した性格がにじみ出る遺言状。
闇深い産婆の生業。
それから、明るくない座敷童の考察。
犠牲になるのは――
陰鬱な展開に、探偵役のミステリー作家飯田先生の踏み込みすぎない態度のおかげか、ストレスも少なく読み込めるはず!!
ぜひ、ご一読を!!
いやーーーーーー面白かった!!隅から隅まで楽しませていただきました!
これから読む人は、自力で推理しながら物語を追っていくことをお勧めします。
しっかり手がかりを拾って推理すれば、きっちり真相に辿り着くことができますよ!
まず、古い洋館という舞台が最高に良い。ひたすら広いし、いろんな設備があって、何らかのトリックを行うにも最適の場と言えましょう。
重厚な空気感が肌に触れるような描写も素晴らしいです。この家に伝わるという、助産師の技や歴史がまた闇深い。
そんな家の当主の遺産を巡って一族が集結するわけですので、そりゃあもう大変な何かが起きるだろうと予想できるわけですが、予想以上に凄かった。
遠野地方の座敷童伝説にも触れた上で、殺人の起きる直前に必ず聞こえる歌がなんとも不気味。
一人、また一人と退場するたび、遺産の絡んだ一族内部の諍いは緊張感を増していく……
王道的な設定ではありますが、主人公であるミステリ作家・飯田先生の軽妙洒脱な語り口で、スマートで現代的な印象の作品になっています。
愛憎と、欲望と、脈々と受け継がれる因習と。
隠されていた真相とはいったい何なのか。
これだけの凄惨な連続殺人でありながら、犯人の事情を含め、ものすごく納得感のある顛末でありました。
ぜひぜひラストまで行き着いてください。そして深い余韻に浸ってください。
素晴らしい本格ミステリでした。本当に面白かったです!