安寧で装飾された死刑台でくらす子供たちと、それを見守る女性の葛藤の物語

臓器提供させるためにつくられた子供たちと、彼らに最大限の人権をあたえるためにつくられた楽園、そして彼らをすこやかにそだてるという職業についているヒロイン。みっつの要素をならべただけでも、作中にうまれる緊張や葛藤がつたわるとおもいます。

子供たちに寄りそうがゆえに袋小路に陥りがちなヒロインの視点で、徹底的に情報統制された世界を描きだす、ルビを駆使した文体が、作品に重層的な味わいをそえていました。

物語はいま、次第に表出してくるさまざまな問題と、それらがみちびく緊張感のなか、無力な凡人のように振るまっていたヒロインが、世界の在り方にふかく関わることになる予兆がしめされたところです。
安寧で装飾された死刑台でくらす子供たちと、それを見守る女性をえがいた葛藤の物語がどこにむかっていくのか。続きを拝読するのがたのしみな作品です。

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