主人公はヒュムという存在意義、自身の存在意義に悩みながら日々を過ごしている。閉ざされた空間で、何が幸せなのか、そもそも幸せに自分はなっていいのか――様々なことを考えながら、講義を続ける。
いずれは『昇華』してしまう、彼らに――
SFの真骨頂ともいえる独特の世界観に一気に引き込まれました。登場人物も一癖二癖あり、序盤と終盤で印象が変わるキャラもいます。そのキャラたちが小説をここぞとばかりに盛り上げてくれています。
更にこの小説の最大の特徴であり、特長であるのが「ルビ」です
ルビの振り方が本当に面白く、ついつい口に出したくなってしまいます。それでいてすんなりと頭に話が入ってきて、主人公の悩みや葛藤についてこちらも同調してしまうこともしばしばありました。
そして私が大好きなのは、どんでん返し。この小説にも予想外のどんでん返しがあり、思わずリアルで嘆息してしまいました。
ぜひとも読んでほしい作品です。
とても面白かったです
人が人を助けるために、身体の一部を捧げる。
家族ならば、愛する人のためならば、きっとそうしたいと願うであろう。
しかし、生まれた時からそのために育てられてきたとしたら。
今までにも幾つもの作品がこのテーマを扱ってきた。
新井素子の『通りすがりのレイディ』
カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』
そこに感情は必要か、感情を持たせることで、ただの恐怖心を煽るだけではないか。
人道的には? クローンならいいのか? 奪う側、奪われる側。
この作品にも、深いジレンマを含んだ葛藤があちこちに散りばめられている。
殊に、主人公雪白ホムラの苦悩となる「EP10-04」
人はみな思う。もし相手の立場だったらどうするかと。
しかし、それは本当にそうならなければ、わからないのだと。
独特のルビの付け方、時に詩のような言葉選び。圧倒的で、唯一無二の世界。
アリスとアゲハは、DUMにおける草原の一対の蝶のようであり、私には哀しみではなく希望に映った。
この子達をどうか苦しめないで。
無邪気にドレスをスケッチするアゲハの横で、自分を持て余すアリスを抱きしめたかった。
きっと私はまだ理解できてない、と想う。
でも、とても惹かれて、ここに立っている。
Absolute02まで読んだところで、迷わずレビューの筆をとります。
臓器提供のためにつくられた生命体「ヒュム」と、彼らが死ぬその日まで恵まれた生活をおくってもらうための楽園。ヒロインはその楽園の中でヒュムを育てる者として生き、ヒュムや同僚と触れ合いながら葛藤を重ねていく……。
皆さんが絶賛している通り、漢字に素敵に当てられたルビはセンスの塊。小気味良いリズムの文章と相まって、文を読む面白さを増幅させます。
そして、感情を持つヒュムと対話しながら、「生と死の境界線」「科学と道徳の境界線」に迷い、苦悩し、内罰的になるヒロインには思わず共感してしまうでしょう。
次の話を読むのが辛い、でも心を痛めながらページを捲る。そんな体験を、皆さまもぜひ。
「Absolute04」EP12-04まで読んでのレビューです。
まず、この作品の特長は、独特のルビだと思います。
例えば、「携帯端末」のことを《ワールドリンク》と言ったり、ドライヤーのことを「鳥型送風機」、《ロビンタイプ》と言ったり、他にも《ブリキックハート》、《ヒアリングスポット》、《サブリメイション》などなど、とにかくたくさんのルビが振られています。
元の言葉とルビの言葉を読んで、「おぉ、こう読ませるのか!」と思ったり、「この読み方は奥が深いなあ」と感心したりします。
このルビが近未来感の演出に一役買っています。
作者さまはルビ振りの達人ですっ!
次に、登場人物が魅力あふれています。
主人公・雪白ホムラさんの考え方、行動の仕方は読み手の共感を誘い、一緒になってこの物語の結末を見守りたくなります。
登場するキャラクターは、ホムラさんの意見に賛成する味方側なのか、それとも敵対する側なのか謎が多く、読みながらサスペンスのようなハラハラ感が味わえます。
私個人的に好きなキャラクターはテラくんと、アリスちゃん。
彼らは「ヒュム」と呼ばれる人物なのですが、それが何かは、ぜひ読んで確かめてみてください。
そして最後にストーリー展開。
近未来、人工生命をテーマにした物語で、そこにある倫理観や価値観、生命について、問題提起されていて、とても考えされられる内容となっています。
いよいよ終盤となり、どんな結末になるのか楽しみです♪
『DUM』と名付けられた閉鎖施設で暮らす、臓器提供という確定的な死を約束された『ヒュム』なる存在。
彼らには行き届いた生活だけでなく、教育までもが与えられ、『最大限の人権』が保証されています。
しかし『人権の保証』とは?
誰かの糧となるためだけに生きる意味とは?
ヒュム達を管理し教育するヒロイン・雪白ホムラの葛藤と苦悩が痛いほど伝わり、読み進めるごとに胸が苦しくなりました。
何故なら、ヒュム達は私達と同じように感情があり、一人一人違った個性があり、死を恐ろしいと感じるのだから。
綿密かつ緻密に描かれた世界観。
独特のルビで表現される残酷で美しい響き。
それらが一体となり、作り上げるこの『ユートピアに見せかけたディストピア』の味は、退廃的なまでに刺激的。
物語はまだ途中ですが、いよいよ世界は大きく動き始めようとしています。
その先に待つのは、望んだ変化か。望みのない変化か。
はたまた、望んだ不変か。望みのない不変か。
人として、いいえ生物として、『確約された死に向かって生きる意味』を深く考えさせられる、壮大な作品です。
その場所はこの上なく快適だった。そこで育つ者は何不自由なく暮らすことができ、いつまでも若々しくいることができる。
ただ一つ他の人間達と違っていたのは、彼らが「臓器を提供するためだけに作られた」ということだけだった。
彼らの管理者であるホムラとともに、読者もこの世界に対する葛藤に巻き込まれていきます。気持ちに陰をさしそうになるとき、束の間の安らぎをくれるのがいつも「彼ら」であることに、さらに心が締め付けられるのです。
葛藤に次ぐ葛藤。
思考の上のさらなる思考。
倫理も道徳も価値観も哲学も、全部壊して作り直す。
頭をかち割られるほどのインパクトが、癖にならずにはいられません。
いつか訪れるかもしれない、人にとっての理想郷。
その矛盾に苦悩しつつも、抗おうとする人々の姿が描かれています。
これを書いている現在では、物語は未だ第三部の半ばなのですが、既にして展開が全く読めなくなってきています。
私の見識不足もあるのかもしれませんが、しかしそれ以上に、物語・世界観に与えられた圧倒的な深みが、まったく核心に至りうる予想をさせないのです。
緊迫した雰囲気、次の話へと進む手を止められなくなるこの感覚を、是非様々な人に味わっていただきたい、そう思わせられる作品です。
私の言葉でこの作品の魅力を十全に伝えることができたのか、という点に関しては全く自信がないのですが、せめて何かの一助となれば、という思いでレビューさせて頂きました。
これからの展開、とても楽しみに待たせて頂きます。
まずは、堂々の完結、おめでとうございます。
物語の中にしっかりと確立された近未来の世界観。独自のルビに彩られた、澄みきったイメージのある映像的かつ叙情的な文章。
最初の章を読んだ瞬間からその世界に引き込まれて、主人公のホムラに魅了された。
ホムラは自身の母親の影を背負いながら、自身のとるべき道、この世界の正義やヒュムの命について、ひたすらに悩み続ける。
私たちはホムラに寄り添いながら、彼女が様々な人物と出会い、考えをぶつけ合い、やがて世界の在り方に対して彼女がどう向き合うか決意するのを見届ける事になる。
ラストを読んだ時の爽やかな気持ちは格別だった。
この無二の物語に出会えて本当に良かったと思える。まだ読もうかどうか迷っている貴方に、自信を持って薦めたい。
命すら消耗する世界。
もはや、あり得ないとは言い切れない現実。
類まれな言葉の響きが美しいからこそ、世界が抱えた矛盾が浮き彫りにされている。
本当に不思議なことだけど、この物語そのものが矛盾を抱えている。
語り手となる主人公【ホムラ】が連ねる珠玉の言葉たちの奥にあるものは、決して美しいものなんかではない。
はじめは無機質な冷たさすら感じた物語が、気がつけばすぐ側に感じられるような矛盾。
困ったことに、どんな結末が待っていようと、受け入れなくてはいけない気持ちにさせられている。
きっと、そう思う読者は私だけではないはずだ。
ぜひ、まだ読んでいない方も、騙されたと思って魅了されてほしいです。
臓器提供させるためにつくられた子供たちと、彼らに最大限の人権をあたえるためにつくられた楽園、そして彼らをすこやかにそだてるという職業についているヒロイン。みっつの要素をならべただけでも、作中にうまれる緊張や葛藤がつたわるとおもいます。
子供たちに寄りそうがゆえに袋小路に陥りがちなヒロインの視点で、徹底的に情報統制された世界を描きだす、ルビを駆使した文体が、作品に重層的な味わいをそえていました。
物語はいま、次第に表出してくるさまざまな問題と、それらがみちびく緊張感のなか、無力な凡人のように振るまっていたヒロインが、世界の在り方にふかく関わることになる予兆がしめされたところです。
安寧で装飾された死刑台でくらす子供たちと、それを見守る女性をえがいた葛藤の物語がどこにむかっていくのか。続きを拝読するのがたのしみな作品です。
世界が滅びて60年後の、全てを政府に管理された新たな世界。主人公である雪白ホムラは、「講義」に間に合うようにと朝の身支度を急いでいる。まだ若干二十一歳の彼女は、実は講義を受ける側ではなく行う側の人間で……。
多くの人は、ここでこう安堵するでしょう。色々あったけど平和になった世界の、平和なお話なんだと。ですがそれは、主人公ホムラの教え子が、人々に臓器を提供するために造られた生命体<ヒュム>であると知った途端、脆くも崩壊してしまいます。
ユートピアを装ったディストピアは、いつか私たちの世界も辿り得る世界です。時にすれ違い、またある時は交わっていく登場人物たちの思考は、常に私たち読者の倫理観を揺さぶり続けます。でも、この矛盾だらけのディストピアは、作者さまの軽妙にして巧妙な言葉遊びとルビと交錯することによって、美しいハーモニーを奏でる。
自身も亡き母への葛藤を抱えながら、大切な教え子を救うために立ち上がったホムラがやがて辿りついた真実と、彼女が選び取った道。苛酷であるけれども、そこには確かに希望の光が射していました。
太陽や、生命までも、人は造り出す。その世界は、やはり退廃的である。
いや、退廃的であるからこそ、何かを補おうと思うのかもしれぬ。
そうして作られた生命は、何のために在るのか。
このレビューを書いている段階では、まだ序章が終わったに過ぎぬが、ここで、言葉を残しておきたくなるほど、彼らの世界は、乾いている。
しかし、私だけではあるまい。その無機質な質感と、眼の眩むようなルビに埋め尽くされたモノの数々の背後にある、それを産んだ人の乾きを感じるのは。
ホムラという存在を軸に旋回する物語は、彼女の周囲が乾き、金属質あるいは造られた有機質であるほど、命を息吹をより強く醸すのかもしれぬ。
的はずれで、暴論であることは承知しているが、私は、そう思い、また読み進めてゆくつもりだ。
生活の全てが徹底的に管理された近未来。
いつもと変わりのない朝を迎え、いつも通り何重もの手続きを踏んで、出勤する職場。
そこは臓器を提供するためだけに生み出されたドナーの子供たち『ヒュム』が暮らす施設だった。
まず目を引くのが、緻密かつ鮮やかに描き出される世界観です。
様々なものがオート化され、それ故に煩雑になっている日常生活が、どこか世に対して斜に構えたような主人公・ホムラの語りを通して綴られていきます。
いずれ消耗される生命体である『ヒュム』と必要以上に深く関わってしまう、彼らを管理する立場のホムラ。
機械的とも言える社会や人間関係の中で、ホムラのある意味での不安定さには好感を抱き、彼女の心の揺れに共感しました。
まだ物語は序盤のようですが、テーマや文章がとても好みで、ついレビューしてしまいました。
続きも楽しみにお待ちしております。