消耗されるために生み出された命と、それに寄り添う者の物語

生活の全てが徹底的に管理された近未来。
いつもと変わりのない朝を迎え、いつも通り何重もの手続きを踏んで、出勤する職場。
そこは臓器を提供するためだけに生み出されたドナーの子供たち『ヒュム』が暮らす施設だった。

まず目を引くのが、緻密かつ鮮やかに描き出される世界観です。
様々なものがオート化され、それ故に煩雑になっている日常生活が、どこか世に対して斜に構えたような主人公・ホムラの語りを通して綴られていきます。

いずれ消耗される生命体である『ヒュム』と必要以上に深く関わってしまう、彼らを管理する立場のホムラ。
機械的とも言える社会や人間関係の中で、ホムラのある意味での不安定さには好感を抱き、彼女の心の揺れに共感しました。

まだ物語は序盤のようですが、テーマや文章がとても好みで、ついレビューしてしまいました。
続きも楽しみにお待ちしております。

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