第11話 それぞれの想い

「何とも思ってない相手に、こんなお弁当作ってこないよ」


ずっと先伸ばしにしてた答えを今、真奈美は求めている。


「私、由哉が好き」


俺を見下ろす真奈美の瞳が、揺れた。


「由哉の気持ち、聞かせて?」


柔らかくふわりとした声が耳を揺らす。


一週間前。


初めて、こいつに弁当を渡された時。嫌じゃなかったし、むしろ、少しだけ真奈美へ気持ちが傾いた。……気がした。


でも、さっき姉貴が秀一へ弁当を渡すのを見て。たったそれだけで、心がうるさいほど騒いだ。


驚き。後悔。焼けるような嫉妬。一気に感情の波が、心に押し寄せた。


真奈美の瞳を見上げる。色素の薄い茶色の瞳。飾らない性格。すらりと伸びた細い体。客観的に見て、真奈美は魅力的だと思う。もしかしたら、恋してたかもしれない。ずっと一緒にいれば、いつか好きになれるんじゃないかという予感があった。


でも、さっきの姉貴を見て……。そんな根拠のない予感は、あっけないほど崩れ去った。


真奈美のことは嫌いじゃない。


だけど、こんなどうしようもない感情の渦に、俺を引きずりこむのは……瑞希だけなんだ。


「由哉……」


答えを促す真奈美の声に、俺は立ち上がる。



「何だよ、話って?」


珍しく秀一に、放課後誘われた。場所は、駅近のファミレス。


「お前も見てたと思うけど、今日、瑞希さんと二人で昼を食べた」


だから、何なんだよ?


俺は、グラスの中の炭酸を一気飲みした。


「こんなチャンスないと思って、次の日曜デートに誘った」


「ガッつき過ぎじゃね?」


思わず棘のある言葉が、口をつく。


「でも、わざわざ弁当作ってくれるなんて……俺をある程度意識してくれてると思う」


「どうだかな?瑞希は、今までコクってきた男、バッサリ断って……」


「日曜日、OKだって」


俺の言葉に被せ気味に、秀一が言い放つ。それは、強烈に否定の余地を掻き消した。


「……何で、俺に報告する?」


「え?」


いつもより低い俺の声に、秀一が少しだけ驚く。


「何でって、お前と仲いいし、お前と瑞希さんも仲がい……」


「お前に、何が分かる?」


「……?」


「いちいち、俺に報告してくんなよ!!」


「えっ?おい、由……!」


秀一が立ち上がるより先に、俺は一人ファミレスを飛び出した。


秀一に当たるのは間違っている。間違っているが、どうしようもない。越えたくて越えれない壁をすぐ横で、あっさり飛び越えていく秀一に、心が耐えられない。


誰に奪われたって嫌なのに、どうして秀一なんだ……!

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