第3話 クラスメ-ト
「おはよ、高梨」
学校の駐輪場に自転車を置いていると、背後から声をかけられた。振り返ると、同じクラスの杉野真奈美が立っている。
「おう」
軽く答えると、真奈美と一緒に教室に向かった。
「ねぇ?」
階段を上がりながら、真奈美が聞いてくる。
「なに?」
「今日も持ってきたの?」
「何を?」
「愛妻弁当」
その一言に、俺は階段の途中で立ち止まり、真奈美を睨んだ。
「お姉さんのお弁当持ってきたの?」
「何だよ、愛妻とか。意味わかんね」
「だって毎日じゃない」
「姉貴が無理矢理押し付けてくるだけだよ」
「そうかなぁ?高梨、お姉さんのお弁当食べる時、すっごく幸せそうな顔してるよ?」
「どんな顔だよ。別に幸せじゃねーし」
くだらない真奈美の絡みに、俺はまた階段を上り始める。
「じゃあさ、今度私が作ってきていい?」
先を行き始めた俺に小走りで追い付くと、真奈美が言った。
「はぁ?」
「お弁当が欲しいんでしょ?だったら私が作ってきてあげる」
「いや、別に弁当が欲しいわけじゃ……」
「明日、作ってくるから。だから、お姉さんのお弁当要らないから」
「何で、勝手に決め……」
「約束だからね!」
一方的な約束を結ばせると、真奈美は教室のドアを開けた。
「おはよ、友梨!」
そして、すでに登校していた女子達のグループの中に入っていく。
ったく。女ってのは、なんで、こっちの話を聞かないんだよ?
ため息をつくと、俺は自分の席に向かった。
気づかない振りをしてるが、さっきのは真奈美の嫉妬なのは分かっている。真奈美は、たぶん俺に好意がある。真奈美は良くも悪くも真っ直ぐで、嘘がつけない。
高一の時から、真奈美の気持ちは何となく気づいていた。姉貴とはちゃんと距離を置いてるつもりなのに、真奈美には何度も「シスコン」だとイジられている。
きちんとコクられた訳じゃないのを理由にして、真奈美との関係を何となく先伸ばしにしていた。
でも、高二になったくらいから、真奈美の態度がよりあからさまになってきている。
退屈な授業二時間目に突入。
暑さも手伝い、もはやダルさしかない。この先の人生で、いつ使うんだか分からない数式を右耳から左耳に聞き流しながら、俺は、ふと開け放たれた窓の向こうに視線を向けた。ちょうど三年が、校庭で体育の授業をしている。
(いた)
姉貴を見つけた。
集団の中に埋もれていても、なぜか姉貴のことは簡単に見つけられる。それは、姉貴が客観的に見て美人なのと、恵まれたプロポーションだからってこともあるだろう。
でも、それとも違う理由の方がきっと大きい。
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