第6話 未来のない想い
いつも以上に頭に入ってこない授業をぼんやりと受け続け、放課後になった。帰宅部の俺は、カバンを肩にかけると、教室を後にする。校舎を出て歩いてると、向こうから真奈美が走ってきた。
「帰るの?」
「ああ」
そう答えると、真奈美が言う。
「ねぇ、バスケ部見てかない?」
「……」
真奈美は、男バスのマネージャーで、前から男バスに入らないかと誘われていた。
「興味ない」
「嘘。バスケ上手いじゃない?何で入らないのよ?」
瑞希さんも入ってるのに、と真奈美が続ける。
「……何で姉貴が入ってるからって、弟が入らなきゃいけないんだよ?」
そう言って先を行こうとすると、真奈美が塞ぐように前に立った。
「あとさ、明日からお弁当は、私が作ってくるからね!」
……ああ、そんなこと言ってたな。秀一の告白のインパクトで、すっかり忘れてたけど。
「だから、瑞希さんにも言っておいてよ?間違って作っちゃったら悪いから」
「ああ……」
適当に返事をすると、俺は自転車置き場へ向かって歩き始める。
『最初は憧れだった。気づいたら、好きになってた』
自転車を走らせながら、秀一の言葉が頭の中でリフレインする。
(……いいよな、お前は)
ハンドルを握る手に力を込めた。
憧れて、好きになって。その先も迷いなく、先に進める。誰も咎めない。しかも、お前なら、他の男共よりも有利だろう。
気づいたら好きになってた。
分かるよ。俺も、そうだから。
だが、俺の恋には先がない。秀一のような未来が……。
沸き上がる苦しさを振り切るように、俺は自転車のスピードをあげた。風を体に打ち付けながら。
家に着き、鍵を開けて玄関に入ると、俺のじゃない黒の学生靴が綺麗に揃えられて置かれていた。
(姉貴?)
おかしいな、真奈美と一緒でまだ部活のはずなんだが。
疑問に思いつつも、少しだけ緊張しながら二階に上がる。姉貴の部屋のドアが少しだけ開いていた。
「姉貴、部活行かなかったのか?」
声をかけたけど、何の返事もない。たぶん疲れて寝てるんだろう。ホッとしたような、少しだけ寂しいような気持ちを覚えながら、俺は自室にカバンを放り投げると、再び階段を下りていった。
手を洗おうと洗面所に行き、ドアを開けた時。浴室のドアも開く……。
「……!!」
中から出てきたのは、二階の部屋にいると思っていた姉貴だった。
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