異世界☆勇者塾

AW

第1章 異世界に塾を開こう!

第1話 開校記念日

 俺……いや、もう“自称”社会人なんだから、私と言うべきか。でもやめておく。


 俺は、千葉 東季(ハルキ)。25歳独身、凡人だ。


 今日は待ちに待った記念日だ。

 何の記念日か分かるかい? 俺の塾の、開校記念日だ!


 塾名は『DY塾』。DYって何かって? 一応、『どんな夢も叶える塾』の略ということにしてあるんだけど、本当は、『誰でも勇者になれる塾』さ。

 昔やってたRPGの要素を練り込んでみた。人は、頭だけでも身体だけでもダメ。賢さと強さを両立させるべきなんだ。そう、この塾の真のポリシーは『脱ノウキン! 脱ガリベン!』。そんな事を告知すると、頭が沸いた怪しい塾だと思われそうだから、ここだけの秘密ね。


 俺がどうして塾を開こうと決意したのかは、俺の負け犬人生から説明するしかない……。





 俺は、大学の法学部を卒業した後、3年間IT企業に勤めた。

 文系から理系への転身? 違うんだ。これには相応の訳がある、はずだ。壮大な言い訳を聞かせてやろう。


 本当は裁判官になりたかったんだ……。好きな言葉は『正義』と『悪即斬』。でも、己の限界を悟って諦めた俺は、大学卒業と共に、しばらくノイローゼ気味に引き篭もってしまった。


 そして、大きく出遅れた就活……挫折を振り返って得た自己分析の結果、学生時代にやっていた塾のアルバイト講師がすごく楽しかったことを思い出し、教育業界に身をおこうと考えた。さらに、どうせやるなら自分で塾を開きたいと思い至ったんだ。


 少子高齢化が急速に進む中、聖域と言われ続けてきた教育分野にも淘汰の時代が到来した。学校と同じ形式の伝統的な一斉指導塾は軒並み生徒を減らし、安価な個別指導塾も一時の勢いは鳴りを潜めた。ここに来てようやく教育業界にも差別化が叫ばれるようになった。


 いろいろなフランチャイズを調べたけど、数パーセントのロイヤリティを捧げながら、古臭い形式に囚われるのはナンセンスだ。だって、世界は新しい教育のカタチを求めているはずだから。今後も勝ち残っていく塾とは……それを無い頭で必死に考えた俺は、その答えをITに求めたんだ。そして俺はITベンチャー企業に就職し、先端VR技術を必死に学んだ。


 こっそり始めた先物取引で、600万円を勝ち逃げすることができた。某国大統領選の前後に原油価格が大揺れすることは知っていたし、大半の予想を覆してあの大統領が勝つことも想像し得たからね……。でも、単に運が良かっただけかもしれない。


 残業に追われながらも物件リサーチを始めた。

 児童・生徒数が増加している地域は、市や学校のデータで分かる。住宅街や学校・駅からの利便性、競合他社の動向、地域の治安や進学熱、エリア内の家計規模や家族構成も調べ尽くした。そして……ある物件に辿り着いた。やはり、運が良かったのかもしれない。


 それは小さな交差点の角にあった。

 築15年のマンション2階。グレーの外壁が古びた感じを醸し出している。駐輪場はあれど、駐車場もエレベーターもなく、最寄り駅から徒歩20分もかかる。そんな物件だからか、床面積25畳の割に、テナント料は月たったの8万円。講師を雇わなければ、諸々の経費を勘案しても生徒10人で赤字を回避できる(単価2万円×10人)。当然、自分の給料を捻り出す必要があるから、生徒40人/講師3人を当面の目標に定めた。夏期講習や冬期講習、テスト前の対策授業を加算すれば、年間500万円以上の利益が見込まれた。


 いろいろなパターンでの試算を繰り返し、十分やれる自信を抱いた俺は、不動産屋に駆け込んだ。

 そして、2月から借りられるよう契約を結んだ。



 2月上旬から新聞折込チラシを合計6回入れ、深夜に何度もポスティングをした。寒さで感覚がなくなった指、固いポストに当たって血が出たササクレ……振り返ればよい思い出だろう。


 休日を犠牲にして、カーペットや壁紙を張る。以前の借主は雑貨屋さんだったそうで、レトロな内装が残されたままだった。それを強引に剥がし、ホワイト&オレンジを基調にした明るい雰囲気に変えていく。続いて搬入作業を行う。机や椅子、パーテーションや本棚と教材、パソコンやコピー機等……開業資金だけで400万円が飛んでいった。

 ここまできたらもう後戻りはできない。するつもりもない。突き進むのみ。3月初旬に説明会を開き、開校は3月7日だ!


 3年間勤めたIT企業には、一身上の都合と告げて2月末に退社した。

 夢があったから3年間頑張ることができたんだと思う。時間を惜しまず組み上げたプログラム……これは全て塾経営に生かすためのもの。社長さん、利用してごめんなさい。罪悪感はある。3年間くらい、年賀状を出そう。メールで。




 何も実績のない新設塾が評価を得るとしたら、サービス料金体系・環境・塾長の人柄の3つだろう。


 前者2つは何とかなる。DY塾は、講師1名に対し生徒3名の個別指導形式。そして個別なのに授業料が安い。某大手の7割程度に設定してある。勿論、『安かろう、悪かろう』にするつもりは毛頭ない。自習スペースは無料開放だし、入退室時に親の携帯へメールが届く安心システムもある。内装は新品を揃え、ホテルのロビーを意識した高級仕様だ。

 春から都内の理系大学に通う親戚の女の子を、講師兼受付として雇う話もある。親戚なので安心だけど、お互いに甘えないようにしたい。でも、かなり可愛いので時給は少々高め設定だ。実際のところ、頭より顔の方が重要なんだ、この仕事は。



 問題は俺自身……これは如何ともし難い。


 見た目はどうだろう? 両想い経験こそないが、告白された経験は10回を超える。芸能人で誰に似ているかと訊かれても、似ている人が居なくて困る。劣化版ジャニーズとでも表現しておくか。現在のスペックは、身長175cm、体重61kgの自称細マッチョ。強いて言えば中の上だ。


 頭はどうだろう? 司法試験こそ合格出来なかったが、中高生の頃は学年で常に一桁順位をキープし、難関私大には合格した。残念なことに高校数学と理科はダメだ。物理は特に低空飛行を繰り返した。これも自己評価で中の上だ。


 運動面はどうだろう? 幼い頃から某RPGの影響で棒(剣)を振り回し、走り回っていた俺は、腕力には自信がある。腕相撲では高校1年生の頃から負けを知らない。関東3位の空手部員にも勝った。球技や剣道・柔道もそれなりにこなせるタイプ。因みに、バレー部。ポジションはセッター。ツーアタックが得意。ダサいと言わないで。まぁ、総じて中の上だろう。


 では、肝心の心(ハート)は? はっきり言う。俺には友達が少ない。中3の春に病気で父を亡くし、たくさん居た友達が嘘のように俺から離れていった。気を遣ってくれたのか、暗すぎる俺に嫌気がさしたのか分からない。それを機に一匹狼を気取ることにした俺は、その後も率先して友達を作ろうとはしなかった。一応、自然と人に囲まれる性格のはず。イジメられっ子じゃないよ? それに、教育に対する情熱もある。正義感も。まとめると、中の下と言ったところか。



 ただし、25歳DTだ。

 何を言おうが、所詮は負け犬の遠吠え。

 それは知っている。


 それに、自己評価と他者評価は全く異なる。

 それも重々知っている。

 よって、私自身、中の中“超凡人”だと認めよう。




 3月3日(金)。

 説明会初日は誰も来なかった……。

 流石に堪えた。ちょっと泣いた。


 大雨だったし、平日だし……。

 それに、大家さんの意向で看板設置がNGだったのが痛い。窓二面にPOPを貼ったけど、視認性はイマイチ。外部用のパンフレット置き場は辛うじて確保してあるけど、雨の日は屋内に仕舞うので目立たないんだ。言い訳をしても意味がない。すぐに改善策を模索しよう。




 3月4日(土)。

 説明会中日。

 午前の部に5家族、午後の部に3家族が来た。


 当塾最大の売りは“VR教室”だ。

 教室内の授業スペース入口に設置したゲートを通ると、室内がVR空間になるようプログラムされている。当然、VRゴーグルなんて身につける必要はない。世界遺産や森林・海中など、バリエーションは100パターンを用意した。それが初めて起動した。


 これは、保護者と生徒に大ウケだった。

 西洋の城が見える湖の畔に並べられた大理石の椅子……その雄大な風景の中で、リラックスして勉強ができる環境は、他のどの塾にもない斬新さだ。



 説明会の直後、2名の生徒が入塾申込みを行った。


 記念すべき塾生第1号は、近隣の中学校に通う、中島 勇人(ハヤト)君、中2だ。気合の入った丸刈りで、見た目通りの野球部。そして、典型的なゲーマーだった。成績はオール3だけど、数学を克服できれば伸びるだろう。中2数学は連立方程式の文章題と合同の証明がダルいけど、一次関数は猛烈に面白い。きっと何とかなる。中島君は、火曜日(数)と木曜日(英)に通うことになった。


 次に入塾したのは、林 雪乃(ユキノ)さん。同じ中学の3年生で、吹奏楽部の副部長さん。眼鏡が似合う超真面目系だ。今まで独学で勉強してきたけど、地元の難関公立進学校を目指すそうだ。英語と国語が得意で、理社が苦手らしい。中学の理社なんて暗記科目なんだけどね。まぁ、いかに興味を持たせられるかが鍵だ。成績を上げる自信はある。林さんは、火曜日(理)と金曜日(社)に通うことになった。


 他塾に通いながら様子見で説明会に参加する方が多いようだ。実際、中学生の9割、小学生高学年の8割が既に塾に通っているとのこと。

 新学期は転塾が多い時期だけど、他塾に不満を持って辞めてくる生徒の場合、要求が重くてモンスター傾向が強いから難しいんだよね。だから、あまり強引な勧誘をしないように心掛けた。




 3月5日(日)。

 説明会最終日。

 午前に3家族、午後は2家族が来塾。


 今日のVR教室は海中設定にした。

 魚の群れが泳ぐ中で行われた説明会は、とても盛り上がったけど……サメが現れた時には、ちょっと引かれた。


 案の定、入塾の申込みは2件に留まった。


 でも、嬉しいことに昨日申込んだ林さんが後輩を誘ってくれたようだ。いや、同じクラスの中島君が誘ったのかもしれない。友人紹介特典で図書カード1万円をあげないといけないので、その辺ははっきりさせよう。平和的に5000円ずつになるのかもしれない。


 3人目の塾生は、中2の加藤 怜(レイ)さん。吹奏楽部だけど、とても活発で可愛い子だ。ただし、学年順位三桁……成績があまり宜しくない。理社はテスト前に叩き込むとして、通常授業では英数の2教科を勉強してもらうことにした。先輩と同じ、火曜日(数)と金曜日(英)に通うことになった。


 4人目は、小学6年生の石井 浩貴(コウキ)君。中学受験をする訳ではなく、公立中学に進むとのこと。大人しい感じの男の子。月曜日と金曜日に、苦手な算数と、英語の予習をすることになった。目標は秋の英検で5級合格。まぁ、大丈夫でしょう。



 3日間に及ぶ説明会は無事終了した。

 ここまでたった一人でやり遂げた自分を褒めたい。でも、まだ始まったばかり。明日の月曜日はゆっくり休んで、3月7日(火)の初授業に備えよう。


 因みに、当塾の授業は小学生17:00~17:50、中学生19:00~20:20に設定してある。生徒が増えてきたら前後の授業コマも埋めていこう。日曜を休校にし、16時出勤の22時あがり。1日6時間×週6日=36時間労働……ゆるゆるだな!




 ★☆★




 そして3月7日(火)の開校初日を迎えた。


 朝からそわそわして落ち着かなかったので、15時に出勤した。


 留守電に問い合わせが3件も入っていた。早速折り返し架電して面談の日時を決める。全て、授業のない土曜日で調整した。最初は焦らずにゆっくり生徒を集めよう。



 授業は19時から。それまでは暇だ。

 中2数学、中2数学、中3理科か。授業の予習をする必要もないので、ネット小説でも読むか……。



 18時過ぎ、最初に現れたのは中2の加藤さんだった。

 制服のまま、ご飯も食べずに来たらしい。やる気がある子は好きだ。


「先生久しぶり! 暇そうですね!」


「加藤さんこんにちは。こんばんは、かな。暇じゃないよ……」


 加藤さんが画面を覗き込む前に、焦ってノクターンを閉じる。


「今日の授業さ、中島と一緒なんでしょ?」


 微妙に嫌そうな顔をする加藤さん……でも、実はそうじゃないっぽい。中2って分かりやすいな!


「あ……ナイショだけどね、中島君がね、加藤さんと一緒が良いって言ってたから火曜日の19時で揃えちゃったよ」


 本当は、中2数学同士で授業をしやすいように俺が勝手に組んだことなんだけどね。加藤さんが赤面しているから、ウィンウィンでしょ。



 その後も、学校や部活の他愛もない話をしていると、当事者の中島君がやってきた。


「先生! レベル15になったよ!」


 何のことはない。共通の話題としてゲームを紹介しただけだ。塾がゲームを勧めるのはNGだけど、某クイズゲームの文系や理系問題は高校受験を念頭に作られている。ゲーム感覚で知識が増えるなら許容範囲だろう。


「中島君、1日1時間ルールは守ること。それと、アニメ・ゲームジャンルはなるべく選ばないような縛りプレイをしてね!」


「まじか! それだけは正答率9割なんだけど!」


 両手で喉を押さえ、苦しそうにもがく中島君。加藤さんが近くに居るけど、中島君は無反応だ。対する加藤さんは固まりつつも、チラチラと視線を送っている。

 片思いか……。好きな人が通う塾に移ってくる子っているよね。うん、キューピット役になってあげよう。



 19時ちょっと前に、中3の林さんが来た。


「こんばんは!」


「こんばんは……」

「林先輩、こんばんは!」


 林さんのテンションが低い。疲れてるのかな。吹部(すいぶ)の練習はハードらしいし、まして副部長だもんね。


「よし! 今日は3人しか居ないけど、その分たっぷり勉強するぞ!」



 俺は気合十分に宣言し、嫌々な中2たちを引き連れて授業スペースに移動する。



 ゲートを潜り抜けるとVRが起動し、幻想的な森林が現れる。

 今日は、1~100のランダム起動にしてある。この森はパターン100、自信作だ。いきなり大当たり! 因みに、ポケットに入れてあるコントローラーで随時切り替えやOFFにすることが出来るのはナイショだ。


 耳を澄ますと、透き通るような鳥のさえずりが聞こえてくる。視覚と聴覚はプログラムしたけど、嗅覚はノータッチだ。でも、何となく森の空気を吸っているような錯覚が起きるから面白い。


 背後には、輝く光のゲートが存在している。ゲートから塾の玄関が見える。一応、電話や来客時にはゲートが点滅するようにしてある。



「すげぇ!」

「これ、先生が作ったんでしょ? もしかして天才?」

「きれい……」


 テンションの低かった林さんも笑顔だ。うん、林さんって笑顔が似合う正統派美少女だね!


「ただの凡人だよ。人間てさ、強い意思で努力を続ければ何でも出来るんだよ」


 机の代わりに、丸っこい切り株が用意されている。椅子の代わりは、大きなウサギさんだ。ウサギの背中に座りながら森の中で勉強する……ちょっとメルヘンチック過ぎたか!

 360度に広がる大森林だけど、実際は狭い授業スペースの中……5m四方しかない。境界線にはラインが引かれているけど、油断すると壁にぶつかってしまいそうだ。



 教材を配布し、簡単な小テストを配る。


 中2の中島君と加藤さんには、中1内容の正負の数と文字式、方程式の計算10題だ。制限時間は8分。数学で大切なのは、計算の速度と正確性。中2前期はしばらく計算が続くし、複雑な等式変形がこなせるようになるまで苛め抜く。飽きるかもしれないけど、手が勝手に動くくらいにならないとダメだ。


 中3の林さんには、元素記号と化学式・反応式と、質量保存の法則の計算を合計20題。所要時間は15分だ。生物・物理・化学・地学とある中で、物理と地学を苦手とする生徒が多い。生物はほぼ暗記、化学は理屈と計算が半々、物理は計算が多めで、地学は理屈が重要だ。まずは化学の復習から入ることにした。


 問題はオリジナル。既に解答も作ってある。過程を見ればどこまで理解しているのか、どこで躓いているのかが分かる。

 大樹の幹に掛けられたアナログ時計を見ながら、それぞれの進捗を確認する。


 林さんは優秀。でも、長い化学反応式までは暗記していない様子。ここが独学の限界か。それでも基礎力は十分ありそうだ。そういう俺も塾や予備校には通ったことがなく、教科書と資料集を暗記する勉強しかしてこなかったんだけど……。


 加藤さんは分数が入ると固まるらしい。まさか、通分や約分が出来ないわけではないだろうけど、遅い。実は、小学生内容の宿題を出すとプライドを傷つけて勉強意欲を失う子が多い。効率的な途中式を書いて見せて、思考を真似させるのが得策か。


 中島君は頭の回転は悪くないし、満点を取れる実力があるのにミスが多すぎる。1問1問見直しをしないと、終わってから最後に全問見直そうとすると見直しのクオリティが下がってしまう。方程式も、解が出たら即代入して確認させないと。



 集中した時間が過ぎていく中、最初に異変に気付いたのは加藤さんだった。


「先生……あれって」


 加藤さんが指差す方向を注視する。

 森の奥で数人の集団が白い馬を追いかけているのが見えた。


「他の生徒……じゃないよね? これもプログラムですか?」


 中島君の質問に、俺は答えられなかった。

 動的オブジェクトは海中バージョンにしか導入していない。授業に集中できなくなるだろうから、あれは遊び気分で実験的にやってみただけだ。それに、決まった周遊軌道しか組み込んでいないので、こんな複雑な動きは出来るはずもない……。


「すごい……」


 俺の沈黙を、肯定だと受け止めたようだ。

 林さんも手を止めて見入ってしまっている。


 それもそのはず……追われているのは角の生えたユニコーン。追いかけているのは鎧を着て、剣や槍を持った人間たちだった。


 なんだこれ……。


 3人は小テストを途中で放棄し、前方から迫ってくるユニコーンに目を奪われている。



 危機感より好奇心が勝ったのだろうか。

 俺は動けなかった。


 3分後、目の前で立ち止まるユニコーン。

 壁の境界線を既に越えている……。


 目が合った。


『助けて……』


 頭の中に声が響く。


「先生……?」


 生徒たちにも聞こえたようだ。

 全員の目が俺に集中する。



 草を掻き分ける音が意識を呼び覚ます。

 緊張と動揺がその意識を掻き乱す。



『そっちに逃げたぞ』

『土魔法で逃げ道を限定しろ!』


 人の怒鳴り声が森にこだまする。

 日本語……?

魔法……?



 俺は咄嗟に生徒たちの前に躍り出る!


 やばい!

 何なんだよこれ!

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