第3話 魔法
門を見上げながら思う。
そう言えば、ユニ子に会った時は昼くらいだった。木漏れ日の差し込む角度から考えて間違いないだろう。
その後、何度か行った検証……常に太陽は高いところにあった。
そして……今。
頭上で、徐々に傾きつつある太陽を見上げる。
地球から見えるよりかなり小さいその球体を眺めていると、ある考えが脳裏に浮かんだ。
時間が経過していない……。
こっちの世界に居るときは、現実世界の時間が止まっているのは確認済みだ。
逆に、現実世界に居るときは、この世界の時間が止まっている?
その説を退ける存在は、俺の時計だ。
昨晩検証したときには23:35を示していた。
因みに、今の表示は17:12。
俺が現実世界に居る間に、こっちの世界の時間が止まっていると考えるのなら、これは明らかにおかしい。
23:35から17:12に飛んでしまっているから。
17:12……これは、俺たちが16時にこっちの世界に来て、1時間12分が経過したという意味以外には考えられない。
でも、この時計は俺の説を裏付ける存在でもある。
昨晩の検証時にはその違和感に気付かなかったが、もしかしたら俺の時計ではこっちの“時刻”を示すことが出来ていないだけなのかもしれない。
ならば、どうするか?
解は明白。
こっちの世界の時計を手に入れれば良い。
社会人にとっては特に、時間の管理は大切だ。最優先で検証しなければ。
「先に、道具屋を探すぞ! 時計があれば買いたい」
林さんと目が合った。
林さんは俺の意図に気付いたようだ。この世界の1日が何時間あるのかを知る必要性を感じたのだろう。
門を潜り抜けると、目の前に飛び込んできたのは、町の中央を占める円形広場と、縦横無尽に行き交う人々、そして広場を囲うように並ぶ建物だった。
生徒たちはこの光景に目を奪われている。
こういう感動って、人生でとても大事だね。
古い町並みのイメージとして、京都のような格子状の街道に慣れた頭では、円形の町並みというのは珍しく、とても新鮮だった。
闘技場コロッセウムのような施設を改築したのだろうか、微妙に中心が低く、すり鉢状になっている。
そして、人々の服……。
日本の時代劇に出てくるイメージとは違う。古代ローマを舞台にした映画とも違う。中世ヨーロッパの、それも農村のイメージだ。
時々、金属製の鎧を着た物騒な姿が目に映る。
モノクロ調の色彩や生地は地味だが、質素ということではない。よくファンタジー物に出てくるイメージにより近い。
俺たちの服装は十分奇異に見えると思うが、行き交う人が振り返って見るほどではないらしい。制服やスーツはある意味地味だからね。
そして、石造の建物……。
白を基調に統一された建造物は、それこそイタリアの歴史ある町並みを再現したかのようだ。
よく見ると、手前側には教会っぽい建物や、花屋・食堂などが並び、商店街になっている。
その奥の方には、住居だろうか。3階建てくらいの団地のような建物が乱立していた。
「先生、あそこ! 道具屋さんみたい」
確かにそうだ。
林さんが指差す方向には、家具やテント類、雑貨類を店頭に並べた店があった。そこそこ大きい。
「男同士、女同士で手を繋ごうか。迷子や人攫い対策ね」
「遠足みたいで嫌だ! 」
「いくら先生でも、男同士で手を繋ぐとか、ヤバ過ぎだろ」
「2人とも! 先生の言うことをちゃんと聞くって約束だったでしょ! 」
「林さんの言う通り。じゃ、中島君と加藤さんが手を繋いで。先生は林さんと繋ぐから」
「「……」」
よし、恋のキューピット計画第一弾だ!
★☆★
手繋ぎクエストは道具屋に到着して早々に終了した。
女性陣の顔が赤くなっている……思春期というやつですね。
道具屋はそこそこ繁盛している様子だった。
突然、俺は陳列棚に向かって走り出し、叫んだ。
「アイテムボックスだ! 」
「まじ? 存在するんだ! ファンタジーすげぇ! 」
盛り上がる男2人を冷ややかに見る女子たち。
「アイテムボックスって何よ? 見た感じただのエコバッグじゃない。ボックスって、箱よね? これのどこが箱なの? 」
加藤さんの言い分は尤もだ。
アニメやゲーム、小説に登場するアイテムボックスは様々な形状をしている。
箱型、袋型、腕輪型、指輪型、透明……。
今、俺たちの前に陳列されたそれは、袋型だった。
肩から掛けるための長い紐、チャックはなく、上部を紐で結わえる方式のようだ。いわゆる巾着袋。ただ、下部が平らな長方形になっているため、小学生の頃に水泳道具を入れていた袋に似ている。
「オレに言うなよ! 先生、なんでアイテムボックスって呼ぶんですか? もしかして、boxって単語に“袋”って意味もあるとか? 」
「疑問に思ったらすぐ調べる。勉強のコツだね! 今の時代は恵まれてるよ」
俺はそう言いながら、スマホで検索を始めた。
横から中島君が覗き込む。
「えっと、“box”の意味は……箱、郵便私書箱、贈り物、仕切り席、電車の信号機、テレビ、女性のセイキ……」
「ストップ! 他には、平手や拳で打つこと、張り手、ツゲって植物……動詞だと、箱に入れる、手で殴る……くらいか」
後先考えずに読み上げる中島君の口を塞ぎ、俺が代わりに読み上げる。
「袋なんて意味、ないじゃん! 」
聞きながらイメージしていた加藤さんが叫ぶ。
大丈夫、セクハラ認定はない。
「まぁまぁ。結論! アイテムボックスは、“開発当初は箱型だった”ということで! 」
あんまりしっくりこない結論だったけど、一応全員が納得してくれた。
「店主さん、このアイテムボックスはいくらですか? 」
俺たちの服装を物珍しそうに眺めていた店主に声を掛ける。すると、ご機嫌丸出しの顔でこっちに歩み寄ってきた。
『これはガチャ商品だ。これを回して当たりの金色が出ないと渡せねぇな。1回銅貨1枚だが、やるか? ちなみに、アイテムボックスは目玉賞品だ。それ以外にも大当たりが入れてある。“シークレットレア”と言うらしいな。その2つが“ユニークアイテム”だ。それ以外は“マジックリング”が少々と、残りはハズレだ。ハズレは、日用雑貨や旅道具なんかだな』
銅貨?
金貨に換算すると何枚分になるんだ?
「すみません、金貨しか持ってないんですけど……」
『あぁ? 釣りは出せないが、金貨1枚ならガチャ100回引けるな』
よく見ると、店の最奥には人の背丈ほどの回転ガラガラ機がある。
ガチャじゃないじゃん! 福引じゃん!
恐らく、金貨1枚=銀貨10枚=銅貨100枚なんだろう。
日本の相場で金貨が50万円と言うことは、銀貨1枚が5万円、銅貨1枚が5千円か。1回5千円の福引だって!?
「ガチャって、あれですか? あんなに大きいのは初めて見ました」
『面白いだろ? 旅人に商売の方法を教えてもらったんだ。こいつのお陰で売れ残りを処分できて、しかもガッポリ稼げるようになった。あの女は天才だな! 』
売れ残りって言ったよ……。
ガチャ、シークレットレア、福引機、旅の女……俺たちはお互いの顔を見合わせて頷く。きっと雑貨屋さんだ……。
「その女性はどこに住んでいるか分かりますか? 」
林さんが店主に質問した。
『知り合いか? 悪いが、名前すら知らねぇよ。そう言えば……町を出るって言ってたっけな』
「そうですか、ありがとうございます……」
女の子に礼儀正しくお辞儀をされて、店主は気分が良さそうだ。
「ここで問題。当たりが出る確率1%のガチャがあるとします。このガチャを100回引いて、1回でも当たりが出る確率は約何%でしょうか? 」
「100%でしょ! だって、1%を100回引けば、1回は当たるでしょ。運が悪ければ当たらないけど、オレのラック値なら、20回以内に当たりを引けるね! 」
「中島君……残念! 」
「先生がそんな幼稚な問題を出す訳ないでしょ? 多分だけど、0%? 実は最初から当たりは入っていませんでした~ってオチ! 」
「加藤さん、危うく営業妨害だよ。それに、そんなトンチクイズではありません。ちゃんとした数学の問題です。林さん、分かる? 」
「ちょうど学校で習った範囲かも。えっと、“1回でも当たりを引く確率”ってことは、1-“1度も当たりが出なかった確率”で求めるってことは分かるんだけど……」
「林さんって、数学得意だもんね! 考え方は完璧。計算が面倒だけど。まず、1回引いてハズレの確率は99%。これはいいよね? で、2連続でハズレの確率は、99%×99%=98.01%。同様に、3連続ハズレは、99%×99%×99%=97.0299%。これを100回繰り返すわけ」
「計算ムリっしょ!! 」
「電卓機能すらめんどいからネット検索する! えっと、99%の100乗は……約36.6%だ。つまり、当たる確率1%のガチャを100回引いても、“全部ハズレ”の確率が36.6%もある。逆に、“1回でも当たりが出る確率”は、100-36.6=63.4%だ!」
「思ったより低い! オレは今までゲーム会社に騙されてきたのか!」
「でも、当たりの中には複数当たった場合も入ってるのよ? それを考えれば、意外と美味しいかも」
「その通り。これが福引のガラガラだと話は変わる。引けば引くほど減っていくからね。100回引けば、当たりが出る確率は100%だ! 当たりが出なければ詐欺だ! 」
『お客さん……引くのか引かないのかどっちなんだよ! 』
「引きます!! それと、時計……時刻を知ることが出来る道具があれば、それも買います! 」
店主はあちこち歩き回った後、小さな円盤のようなものを持ってきた。
直径が10cmくらいのソーサラーのような物。
受け取ると、ずっしりと重い。
金属製の円盤には白と黒の台座があり、その上には1本の針がある。どうやら時間を示す“短針”のようだ。
『これは“時読み”というマジックアイテムだ。銀貨2枚だが、買うか?』
「買います」
そして、俺たちは念願のアイテムボックスを手に入れた!
出費は金貨3枚……。
オリジナルのユニ子金貨を使わずに済んだ。
それと、運良く超大当たりもゲットした!!
“対の扉”
二点間を空間魔法で結ぶマジックアイテムだ。
手のひらサイズの立方体(キューブ)で出来ているそれは、よく見ると金銀2色が複雑に噛み合わさって構成されている。
それを2つに分けると、それぞれが2m四方ほどの扉に変わるらしい。その扉はどちらからでも往復可能だそうだ。
これは……アイテムボックス以上に使える!
それ以外に手に入れた物は、山のような日用雑貨と旅道具……あとはマジックリングなるものが入った小箱が10個。
このマジックリングというのは、この世界での魔法やスキルらしい。
魔法……魔法書や詠唱が必要なイメージがあったけど、この世界では、指輪を嵌めるだけで魔法やスキルが使えるそうだ。かっこいい!
「先生! オレたちにも何かくれるんですよね? 」
店主が好意でくれた大きな袋の中に戦利品を詰め込みながら中島君が聞いてきた。
「そうだね、“アイテムボックス”と“対の扉”は共有するとして、他は安全な所で分配しようか」
「「賛成! 」」
道具屋に黄色い声が溢れる。
道具屋の主人は、当たりを全部持っていかれて不機嫌になっているかと思いきや、そうでもないらしい。
店を出るとき、後ろから笑顔で声を掛けられた。
『もしユニークアイテムが使えなかったら買い取ってやるからな! 』
「使えない? もしかして故障品を売ったんですか!? 」
『そんな汚い商売しねぇよ! ユニークアイテムってのはな、相当な才能の持ち主にしか使えねぇんだ。あんたは裁判官か? 使えるといいな。はっはっは! 』
おい!
そういうことは最初に説明しろって!
でもコピー金貨を使った俺たちが言えることじゃないか。
「そろそろお腹が空いて倒れそう」
「この荷物どうするんだよ! 」
「あんた野球部でしょ? そのくらい何よ」
「吹部だって重い楽器を振り回してるし、階段ダッシュとかで鍛えてるんだろ?」
「振り回してないわよ! バットじゃないんだから」
「はいはい、痴話喧嘩はそこまでよ。先生、個室で食べられる食堂があれば、そこで分配とかしちゃいましょうよ。アイテムボックスが使えれば収納できるんですよね? 」
「そうだね、あっちに食堂街があるみたいだ。行ってみようか」
★☆★
意外なことに、日本食があった……。
「ラーメン!? 」
「まじだ! 」
「もしかして、例の雑貨屋さんが広めたとか?」
「考えられる……」
「変な肉を食べてお腹を壊すくらいなら、安全なラーメンでも食べるか」
「オレは異世界食堂に憧れてたんだけど! 」
「中島君、今日は諦めてくれ。そういうのは、先生がいろいろ検証してからだな。安全だと確認してからうんと食べさせてやるからな」
「了解! でも先生もあまりムリしないでよ? 」
「まぁ、死ぬようなことをするつもりはないよ」
俺たちは、『ラメン食堂』と書かれた店に入った。
座る前に注文と勘定をするらしく、俺と中島君がシオラメン、林さんと加藤さんがショユラメンを注文した。
1食銅貨1枚、日本での金貨相場から逆算すると5千円……ガチャ1回分という高額ラーメンだ。恐らく、雑貨屋さんが広めた新メニューなのだろう。新しいもの好きは高くても食べに来るらしい。
俺たちの場合、真新しさはないが、安全をお金で買うと考えるしかない。
ちょうど夕食時で、かなり混雑していたが、他の客と交渉して(銀貨が1枚飛んだ)個室を譲ってもらうことが出来た。
「美味しくない!! 」
「おい、店員に聞こえるように言うなよ! 出入り禁止になるぞ! 」
「だって、麺にコシがないし、お肉もパサパサだし! 」
「食材が揃ってないだろうし、こんなもんでしょ。それより早く食べて分配するぞ! 」
「「は~い……」」
確かにマズかったけど、小麦粉の製麺技術とか、スープへのこだわりとかが向上してくればラーメンは進化するからな。今後に期待だ。
「まず、“アイテムボックス”をテストする」
俺は、がっしり結ばれた紐をほどいていく。
袋の口を開けて中を覗きこむ。
中は大き目の段ボール箱くらいの広さになっていて、箱の底が縦10マスの横15マスずつに仕切られていた。1マスは縦横10cmくらいか……。
10×15=150個の物が収納できる?
「やめてっ! 」
中島君の抗議を無視して、試しに中島君のバットを入れてみる。
明らかに袋に収まらない長さだ。
実験には丁度いい。
おぉ!
バットが小さくなってマスに収まった!
面白いぞ、これ!
今度は、袋に手を入れ、バットが入っているマスに指を伸ばす。
マスに指が触れると、バットが手に吸い付くように出てきた。
そのまま袋から手を出すと、バットは元のサイズに戻った。
「成功!? 」
「問題なく使えた。皆もやってみて」
全員がアイテムボックスを使うことが出来た。
中島君のバットがやっと活躍した瞬間だった。
「次、“対の扉”をテストしよう」
シークレットレアのテストに、心なしか全員が緊張で固まる……。
俺は、手のひらサイズのキューブを、金銀がちょうど分かれるように手に取り、ゆっくり引っ張った。
カチッという音がして、キューブが2つに割れる。
正直焦った……。
でも、それが正常起動であることが分かったのは、その後、割れたキューブがそれぞれ宙に舞い、金銀の光を放った時だった。
「綺麗……」
誰かが溜息と一緒に発した言葉……まさにその通り。
オーロラのように輝く光が徐々に広がっていき、やがてそれは2m四方ほどの大きさになった。
そして、突然に光が失われた。
その代わりに現れたのは、2枚の扉。
それが、食堂の個室、壁際に2枚並んでいる。
「汚い……」
それも、まさにその通り。
木製の古びた扉。
古い民家とか、海や山の公衆トイレとか……そんなイメージの、どこにでもあるような質素で、薄汚れた扉だった。
「開けるよ」
俺は、そのうちの左側の扉にある取っ手を掴み、ゆっくり力を込めていく。
ギシギシ音が鳴るかと思ったら、とてもスムーズに開いていった。
「えっ!? 」
左の扉を開けたら、右側の扉も自動で開いたのだ。
そして……扉の向こう側には、金や銀のオーロラのような光の幕があった。
「入ってみるね……」
「先生、気をつけて! 」
俺は、勇気を振り絞り、左側の扉の中に右足を一歩踏み入れた。
「あっ!! 」
女子2人が手で口を押さえて悲鳴を上げる。
それもそのはず、右側の扉からは俺の右足が出ているのだ。
いけそうだ。
思い切って身体全体を潜り込ませる。
一瞬だけ、弱い電気が走るような感覚があった。
そして、俺の身体は右側の扉から抜け出し、目の前には驚きの表情で見上げる生徒たちの顔があった……。
「みんなもやってみて」
俺が両方の扉を閉めると……扉は再び光に包まれ、金と銀、1対の物体が噛み合って1つのキューブに戻った……。
壊れてないよな!?
それを林さんに手渡す。
林さんは、俺がやったようにそれを左右に割り、2枚の扉を出現させた。そして、右側の扉から入り……左側の扉から出てきた。
そして、扉を閉じて再びキューブになった“対の扉”を加藤さんに手渡す。
この後、加藤さんも中島君も問題なく“対の扉”を使えることが分かった。
「これって、“相当な才能”が必要なんでしょ? オレなら当然だけど、加藤まで使えるとか、イージーモード過ぎないか? 」
「何よ、あたしは余裕だったけど、あんたはギリギリ使えたんじゃない」
「はいはい、仲良くね! 次は……マジックリングだね」
袋から取り出された10個の小箱。
テーブルの上に置かれたそれは、赤と青と緑の3色がある。
赤が2つ、青が2つ、緑が6つだ。
でも、違いは色だけではなかった。
青の小箱の1つと緑色の小箱の1つは、他と比べると光沢があった。レアっぽい感じがする。
「箱を開けるね」
俺は赤い小箱を手に取り、開けた。
中に入っていたのは、1枚の紙と指輪……。
まず、4つ折りにされた紙を開く。
どうやら、説明書みたいだ。しかも日本語……。
それを、生徒たちに聞こえるように読む。
「“火魔法/下級は、直径10cmほどの火球を生み出す魔法である。習熟度が上がれば土壁さえも貫通するだろう”だって」
「魔法が使えるの!? 」
「さすがに実験は後回しだ。どんどん開けるぞ!」
俺は、残り9個の小箱を開け、中に入っている説明書を音読した。
「赤が攻撃系魔法、青が防御系魔法、緑が生活系魔法って感じ? 中級が2つ、下級が5つ、下級とかの括りがないやつは、いわゆる常時発動のパッシブ魔法かな……それが3つだね」
まとめると、こんな感じ。
<赤>
・火魔法/下級:直径10cmの火球を生み出す
・水魔法/下級:直径10cmの水球を生み出す
<青>
・結界魔法/中級:5m四方の結界を生み出す
・治癒魔法/下級:軽傷や軽い病気を癒す
<緑>
・浮遊魔法/中級:己や他の物を空中に浮かせる
・生活浄化魔法/下級:体表の洗浄を行う
・危険感知/下級:半径10m以内の敵を感知する
・状態異常耐性:物理、精神異常耐性を強化
・食物超吸収:大便、小便を排出しない
・食物超吸収:大便、小便を排出しない
「それで、先生……どうやって分配します? 」
加藤さんが、いかにも欲しそうな物を凝視して聞いてきた。
「ジャンケンって言いたいところだけど、先生が決めます。文句は言わないように! まず、赤は先生と中島君で分けます。青は女子で分けてください。それと、緑のうち、ウンコリングは女子にあげます。生活浄化魔法と状態異常耐性も女子で分けてくださいな。残りの緑2つですが、浮遊は先生が貰いますね。危険感知は中島君にあげます。またこれからゲット出来るかもしれないし、今はこれで我慢すること」
「「はい! 」」
結局、マジックリングの分配はこうなった。
俺:火魔法/下級、浮遊魔法/中級
中島君:水魔法/下級、危険感知/下級
林さん:食物超吸収、生活浄化魔法/下級、結界魔法/中級
加藤さん:食物超吸収、状態異常耐性、治癒魔法/下級
道具屋で買った時計を見ると、針はもうすぐ黒い部分に差し掛かろうとしていた。
「よし、分配終わり。そろそろ暗くなるな……帰るぞ! 」
「「え~!! 」」
不満の声が上がるが、さすがに夜は危険だ。
もっと調査や検証をしてからだ。
俺は、有無を言わせず、残りの戦利品をアイテムボックスに突っ込み、生徒たちを引き摺るように店を出た。
夕暮れに染まる森に入る。
各自指輪を嵌めて実験しながら歩く。
火や水、浮遊の魔法は特に練習が必要だ。
1時間もすると、見覚えのあるゲートに辿り着いた。
無事にゲートを潜り、全員が教室に帰還した。
ポケットからVRコントローラーを取り出し、OFFにする……やはり、教室の時計はまだ16時だった。
「先生!! 」
中島君の叫ぶ声を聞いて、振り返る!
「指輪が……」
まぁ、そうだろうな……。
中島君の指には、ソフィーリアで手に入れた指輪がそのまま嵌められていた。
もしかすると……。
俺は左手に嵌めた浮遊魔法の指輪に力を込める。
すると、身体が宙に浮き上がった……。
事の重大さが理解できたのか、3人は口をポカンと開けたまま俺を見上げている。
「指輪は塾で預かっておく」
素直な生徒たちで助かった……。
俺が差し出した両手の手のひらには、合計10個の指輪が乗っている。
「指輪はアイテムボックスの中に入れておく。アイテムボックスは、“ゲート101”の時計の幹の宝箱に入れておくからね」
「「はい!」」
そして、俺は生徒たちに3時間ほど自習をさせている間、新たなプログラム作成に励んだ……。
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