いつも一緒に幼い日々を過ごした、少し大人びた女の子・春陽と、そんな春陽をどこか姉のように慕っていた男の子・柊。
時を経て、それぞれの環境は変わっても、お互いへの想いは何も変わらないと思い続けていた時間。
けれど、成長とともに、そんな無邪気な心も少しずつ、でも確実に移り変わって——。
ひとを慕う心とは、何だろう?幼い心で感じていた「好き」は、思春期に差し掛かった彼らの心の中でどう変化していくのか。
成長し、急激に形を変えていく自分の心を受け止めきれない主人公の焼け付くような胸の内を、巧みな情景描写と丁寧な心理描写によりリアルに描き出した、深く印象に残る作品です。
瑞々しい青春の雰囲気と、幼い頃の可愛らしい回想がとても爽やかで素敵な物語です。
泥だんごを極める──。
5~6歳の子が必ずと言っていいほど通る道ですね。
でも、春生まれの女の子と晩秋(かな?)生まれの男の子では月齢差や性差がかなりはっきり現れる時期。彼女の方が「たまご」のようにつるつると綺麗な泥だんごを作れるのに対して、自分は歪なでこぼこの泥だんごになってしまう。
そんな二人だけれど、とっても仲良し。まだお互いを意識するような年齢に届かない彼らの関係が変わる出来事が訪れます。
それから恐らく10年以上の年月が経った夏。
暑さの中で必死に自転車を漕ぐ彼の心境はラストに語られています。
青春の息苦しいまでの煌めきが、彼の瞳に差し込む夏の日差しと重なります。