錬金術師が生み出したもの

不勉強から、この小説がある程度は史実をなぞっていることに最後まで気づきませんでした。

本作は18世紀、神聖ローマ帝国ザクセン選帝侯兼ポーランド王のアウグスト2世が、錬金術師であるヨハン・フリードリッヒ・ベトガーを幽閉して陶磁器を製作させた史実をベースとしたファンタジーです。

東洋から輸入されてきた美しい陶磁器。それと同じものを作ろうとして、しかし作ることができず、焦燥と神経衰弱のなかに身をやつしてゆく錬金術師・ベドガー。そんな彼の前に現れたのは、陶磁器のように透ける白い肌を持った東洋人の少年・影青でした。

喋ることもなく、不気味な佇まいを見せる美しい少年・影青――彼は何者なのか。

史実をベースとしつつ、それを幻想的かつ、青白磁のように落ち着いた、そして冷たい手触りのある美しいファンタジーに仕上げた著者は、まさに黄金の代わりに白磁を作り上げた錬金術師のような存在であると思います。

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