物語は輝男という一人の天才科学者が、優秀だけれど危険な発明をする人々が幽閉されている研究所から脱獄を計画するところから始まります。
彼は誰よりも優しく、周りに傷つけられてもやり返そうとはしない、平和的な人間です。
だからこそ、彼はいつも人を幸せにするための発明をするのですが、その発明を悪用する人間が時おり現れて彼を苦しめてきました。
現代社会に居られなくなった彼が仲間たちと目指すのは、子供の頃から夢だったアトランティスという理想郷です。
果たしてアトランティスはどこにあるのか。
この物語は科学者たちの脱獄という冒険と並行して、アトランティスの手がかりとなるとある少年の手記と、さらに輝男の半生が描写され、一つの壮大なストーリーとなっています。
伏線がいくつも張り巡らされ、パズルのように組み合わさって、過去と未来の出来事が語られる度に少しずつ物語の秘密が明かされていきます。
情報の与えかた、手がかりの出し方がとても上手いと感じました。
またどの主要キャラクターにも人間味があり、暖かさを感じるのも楽しみのひとつです。
貴重な読書体験ができました。
二百人の天才科学者たちが、それぞれの頭脳を駆使し、収容されている施設から集団大脱走!
…と、これだけでも映画になりそうな一大エンタメの気配がしますが、本作は脱走するだけにとどまりません。
彼らが目指すのは、はるか昔に海中に没したと伝えられる文明大陸・アトランティス。
主人公・輝男は、その伝説に魅せられ、その存在を裏付ける証拠を手に入れます。
彼の天才的頭脳を正しく使えない人類のもとから脱し、未知の可能性を秘めた伝説の大陸へ。
物語は、輝男の脱走劇の進行に沿って進みますが、輝男の過去・はるか未来の世界の話まで、同時進行で語られていきます。
過去・現在・未来が同時に進みながら、脱走の顛末、それに伴う数々の謎を明らかにしていくのです。
広い世界を横軸に、時空を超えた長き人類の物語を縦軸に。
三つの時代の物語が、時に混ざり合いながら、同じ地点を目指して帰結する瞬間の快感は、もちろん読んだ人にしかわかりません。
私は本作と、同作者の別作品『ボーイズダイアリー』を読んで、長い時を描く、登場人物の半生史っていいな、と思うようになりました。
幅広い年代を掘り下げるので難しそうですが、いつか書いてみたいテーマです。
人類普遍の重い問題を取り上げながらも、コメディを織り交ぜながら軽いタッチで読みやすく描かれるのはこの作者の持ち味ですね。
映画のような、壮大かつ爽快なエンタメをぜひ味わってみてください!
とても純粋な心を持つ天才科学者が起こす脱獄劇は、現在を嘆く作者の心の叫びでしょう。
みっつの時間軸からなる構成は、しっかりと練られていて迷うことなく読み進めることができます。
その三つからなるそれぞれの中心人物は、全て純粋な心を持っています。
なんとしてでも貶めようとしてくるもの達から守ってきたのは、自分の心。
疑うことのない純粋で真っ直ぐな心が、周囲の人々を惹きつけ、アトランティスへの道を開いていきます。
彼は、今も私達の起こす全てを見続け、心を痛めていることでしょう。
その心の痛みが少しでも和らぐような世界へ、一歩ずつでもいいから進んでいきたいものです。
本作は科学的(サイエンティフィック)な虚構(フィクション)でありすこし不思議な話しなのだが、鏡のように世相を反映しているとわたしは思う。本作を読みはじめた当初、まるで今という時代をそのまま小説という形式に変換したようだとの感想を持ったものである。
元来わたしはひとにものを薦める趣味を持たない。そうなのだが、わたし個人としては、サクッと読める作品よりも、長大かつ重厚な作品を好むひとに本作をオススメしたい。わたしがそうだったように、いわゆる「オカルト」にまったく興味・関心がないひとでも読むのに支障のない内容だと思う。
このサイトは★を最大3つまでつけて評価する仕様だが、仮に5段界評価だったとしても最大の5の評価にしただろう。まれにみる傑作だと思う。
囚われの身の科学者が伝説のアトランティス大陸を目指す脱獄物語を主軸に、彼の生い立ちの物語、そして彼が発見した「手帳の中の物語」を絡ませて展開するSF巨編。
3つの物語が交差しながら進んでいくものの、そのナレーションがすべて読みやすい語りで、分かりやすい構成で進められていくので、迷うことなく話を追っていくことができます。
スケールの大きな脱走劇を前に、主人公を取り巻く天才科学者たちや、彼を支える者たちがどう関わってくるのか。物語が絡み合うなかで、彼らの人物像や人間関係もくっきりと浮かび上がります。そこで感じるのは、本当の友を持つ幸福。どんな状況でも信じ合える者がいる心強さ。
天才科学者である主人公の境遇はまったくと言っていいほど幸せではありません。幸福を追求して生み出したはずのものも、使い方を誤れば人を不幸に貶める。理想と現実のはざまに苦しむ姿には、過去を生きた(あるいは現在を生きている)科学者の悲しみを見るようです。
彼の目に映る世界のありようは、おそらく筆者の見るそれと同じなのだと思います。そこには人類への絶望感、怒り、警鐘が表れています。しかし同時に、アトランティスに象徴される希望や、人類への果てない願いも強く感じるのです。
SF娯楽大作であると同時に、生きる上で忘れたくない箴言がたくさん織り込まれたお話です。すべての世代の方にお勧めします。
物質の大きさについて考えたことがあろうか。
私は子供の頃に「ゾウが自分の足を登ってくるアリに気付くだろうか」と考えたことがある。
逆に「アリは自分が登っているものがゾウの足だという事を知っているのだろうか」とも考えた。
大きさに限らず、全てのものは相対的な事に振り回されている。
それに気づいたのは幼稚園の頃だ。確か4歳だったと思う。
私は母に訊いた。
「100円って、高いの? 安いの?」
母はこう答えた。
「このゴマ一粒が100円だったら安い? このお家が一軒100円だったら高い?」
私はこの母の回答に『相対性』という概念を見出した。
勿論そんな言葉は知らないが、概念として『理解』した。
この物語に出てくることは『相対値』で考えられることがとても多い。
物質の大きさ、温度、美醜、幸福度、頭の良し悪し、強さ、実体と空想、社会的地位、人の価値観、善悪の判断……数え上げればきりがない。
『壮大なスケールで紡がれた科学者たちの脱走劇』というのが恐らくこの話の筋なのであろうが、実は読者の価値観が試されているのではないかという気もする。
――あなたは、この話をどう読みますか?……と。
マイナージャンルといわれるSFのジャンルにも、胸をうつ至極の作品があることを認識させてくれる作品です。
ストーリーは、ある科学者の脱獄物語を、三つの視点から描いた特殊な構成をしています。
最初は当然、バラバラに展開していきますが、ラストに向かって一つの形になっていく様は、まさに驚きと感動以外にありません。
ストーリーの背景にも細かな描写が挟まれており、それが積み重なってヒューマンドラマを形成している点も見逃せない部分ではないでしょうか。
科学が人の夢を実現させたとしたら、果たして人は科学を元に成長したのかというテーマも興味深いものがありました。
一人の科学者の半生と脱獄ドラマ。涙なしにはラストを迎えられない極めて良質な作品です。ぜひ万人向けにオススメします!
謎の大陸アトランティスをめざし
天才科学者たちが脱獄をする大きな物語を主軸として
3つの物語が語られ、次第に交錯していく。
一つは主人公テルオの幼少期から青年時代。
もう一つは過去か未来なのか誰なのか、最初は謎である。
丁寧に糸がほどかれ、明かされた秘密が全体を包み込んでいく。
随所に暴力への抵抗が描かれているのも読みどころ。
言葉の暴力、無視する暴力、殴り蹴る暴力。
暴力には暴力で返さないと気が済まない風潮の世の中で、主人公は決してそれを望まない。
それは負の連鎖になっていくだけだから。
平和のために、大切な人のために発明品を作っては、悪のための道具として使われていく悲しみ。
人の善意と悪意についても思いを巡らせてしまいます。
戦争のきっかけも小さな火種から大きくなっていく。小さいうちに消していきたいね。
それにしても、こんな荒唐無稽なお話、どうやって一人の人間から生まれるの?
作者さま、あなたは本当はラストに出てくる人物なのではないかしら。
天才科学者達が繰り広げる脱獄劇、というだけでも楽しいのに、この作品には様々な魅力がぎゅうぎゅうに詰め込まれていて、とても語り尽くせません。
三つの物語が進むにつれて、ピースがカチカチとはめ込まれ、壮大な物語として広がっていく楽しさ。
SFと脱獄、というわくわく感。
コミカルなシーンの中に流れる優しさ。
人の心を抉りだす時のリアルな質感。
立ち止まって考えてしまうメッセージ、など、など……。
これだけの要素が読みやすく紡がれていることに、読みながら驚いてしまいました。
ラストも、好きです。
しばらく作品世界に浸り、色々と考えていました。
とても素晴らしいひとときを過ごさせて頂きました。
物語の主題は「脱獄」ですが、現在・過去・未来という複数の時間軸をまたにかけた壮大な冒険活劇。
主人公の輝男は大学で物理を専攻したけれど、厳密には科学者ではなく発明家。数々の業績を上げ、ノーベル賞を受賞しながらも現在はなぜか刑務所に入っている・・・・・・というところから物語は始まりますが、冒頭からグイグイ引き込まれます。
スケールが大きいことは序盤でうかがえますが、こんなに壮大な展開になるとは予想もしませんでした。そして終盤で提示される人類史上のいくつかの謎への答えも興味深い。3つの視点が複雑に絡みあう構成ながら物語の筋は分かりやすく、冒険要素やアクションシーンも満載で少年漫画のようなノリで楽しめます。
ぜひご一読あれ。
舞台となるのは天才科学者たちを集めた国立総合科学研究所……という名の刑務所。
刑務所といっても生活に不自由はないし、研究活動も好きなだけできる。ただ外に出るだけは認められていない。
そんな刑務所の中に閉じ込められていた科学者の一人、織田輝男はそこから脱走を企むのだが、ただの脱走ではない。
研究者200人全員を巻き込んだ大脱走だ。
しかも彼らの脱走の目的地は、幻の大陸アトランティス!
この輝夫の語り口調が大変軽妙で読みやすく、さらにエピソードを短く区切っていくので大変テンポよく読み進めることができる。
個人的にはSF作家カート・ヴォネガットの小説を思い出しました。
この輝夫と仲間たちの脱走計画だけでも十分に面白いのですが、本作はそれ同時に、アトランティスで暮らすスケイプという少年の物語、そして謎の人物が書いた輝男の過去を書いた伝記が同時進行で綴られていきます。
最初はバラバラに見えたこの3つの話が、物語が進むにつれて絡まり一つの物語に収束するという構成は実にお見事!
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)
これは書き手の壮大な構想を『一冊の本に纏めた』詩編である。
強烈に癖のあるキャラクターの自己紹介、それが冒頭に用意されている。
そこでまず身を乗り出し、姿勢を正して読む構えをとってしまう。
紹介文は短いものだったが、その500文字にも満たない文章に魂が宿っているのを感じたからだ。
あらすじにもある通り、これは脱獄物語。
しかし普通の刑務所からの脱獄ではない。
超極悪人が収容されている無法地帯からの脱獄でもない。
ある特殊な条件を満たす者が収容されている場所からの脱獄だ。
その場所については、読み進めると直ぐに明記されているので是非御自身の目で確かめて欲しい。
狂科学者、人間味の無い合理的な人物、そして未知なる機械人形。
物語の軸となる主要人物に加え、妖艶な謎の女性やロリテイスト漂う女科学者等、一癖も二癖もありそうな愛すべきキャラクター達が脇を固める。
それだけでも既に面白そうな予感が走る設定であるのに、これでもかこれでもかと興味深く惹きつけられるエピソードが重ねられ、もう許してくれと身体が歓喜の悲鳴を上げ続ける。
私如きのレビューでは満足にこの物語の良さを伝えらえないのが口惜しいが、それでも書いておきたい。
何故なら、そうする事によってこの真なる壮大な物語がWEBを閲覧されている方の目にとまるからだ。
本当は独り占めして誰にも知られたくない。
そんな思いもあるのは確かだが、それ以上にこの大作は万人に評価されて然るべきだと思う気持ちの方が強い。
是非読んでくれなどと、陳腐な台詞は書けない。
だから、こう書こう。
共に新たな可能性の息吹を見定めよう、と。
天才科学者がアトランティス大陸を目指し、脱獄するお話。
これを主軸として、他視点のお話が2つ、存在します。
脱獄なんて、どんな悪い事をした科学者なのか?
気になりますよね。
まず、ここで驚かされる事になるでしょう。
そして、他視点のお話。
これらがどう繋がってくるのか。
最初は見えそうで見えない繋がりなのですが、繋がった瞬間がもう、たまりません!
こちらの作品には、現在・過去・未来、全てが詰め込まれています。
人間の愚かさや過ち、そして真に大切なものは何かを訴え、強く問いかけてくる作品でもあります。
今、悲しい事に、現実でも過ちが繰り返されています。
それは問題の大小に関わらず、です。
私達は繰り返さないと学べない生き物なのでしょうか?
そうではないと、私は思いたいです。
そして残念な事に、私の言葉だけではこの作品の素晴らしさを表現しきれません。
それでも、書かずにはいられませんでした。
それぐらい面白いです。
私の言葉が大げさだと思う方も、タイトルの『アトランティスのつまようじ』に「ん?」と思われる方も、ぜひお読み下さい。
きっかけはなんだっていいのです。
読まれた方それぞれに必要なメッセージが届く。
そんな思いの込められた、たくさんの方に読んでほしい作品です。
大河のような物語を一滴目からいただいております。
少しずつですが、長い長い河を行くように、共に畔を歩みたいと思います。
作中、私の感じたことは、人はどのように生まれ、どのように生を切りひらいて行くのか、人生の端々が見えます。
目次を拝見いたしますと、視点の切り替えが分かります。
主人公が一人ではない。
これも大変な創作ではないでしょうか。
作者様は、人の運命的な位置付けがとても巧みです。
他の作品でも運命を扱ったものがございました。
綿密に練られた本作、計画的な表面上のことよりも、登場人物達の気持ちに寄り添いながら、壮大な物語だと言うことを忘れて頁を捲ると、きっといつかラストが待っている。
それも楽しみの一つです。
大幅改稿をなさったようで、これからも楽しみな本作となっております。
拝読している途中ですが、応援させてください。
是非、このタイトルが気になった方、真意を掴みにいらしてください。
たまたま、この作品を見つけて、評価も高いし、紹介文を見てもおもしろそうなので……。とそんな軽い気持ちで読んでみましたが。
ものすごい作品です!
私の中では、いまの★の10倍くらいの評価があっても良いのでは、と思うくらいです。
アトランティスのつまようじ。
タイトルだけでは意味は分かりません。
中身を見ると、刑務所に閉じ込められた一人の壮年の科学者が脱獄を志す現代の話と、彼の生い立ち。それから一見何の脈絡もなさそうな、はるか未来の一人の少年の話。
それが、各章にそれぞれ散りばめられています。
それらが同時に進んでいって、どう絡み合うのかなと思ったら「そう来たか!」と素晴らしさのあまりうなってしまいました。
脱獄の本編も魅力的なのですが、主人公を取り巻くキャラクターたちも魅力的。さらに不遇な人生ながらも、腐らなかった主人公の強さ、号泣もののフィナーレ。
「アトランティスのつまようじ」とは一体何なのかも、ご自身の目でお確かめください。
そして最後に、この話を通じて、作者さまが訴えたかったメッセージとは?
私自身もとても考えさせられるものがありました。
ネタバレになってしまうので、これくらいにさせていただきますが、最後に一言。
本当に読まないともったいない、いや読むべき作品です。
素晴らしい読書時間をありがとうございました。
囚われの天才発明家は、嘆いていた。人間は、なんと愚かで幼稚なのか。だが彼は、諦めてはいなかった!
仲間の囚人達(天才科学者)や大切な友人と力を合わせ、彼ら(ペット含む)は理想郷を目指す。謎の大陸にして約束の地、はるかアトランティスへ!
その伝記で語られるのは、愛されずに育った一人の少年について。
「テルオ」は気高い魂と優しく純粋な心、そして天才的頭脳の持ち主。辛く孤独な生活の中で生涯の友を得た彼は、苦労を重ねながらも成長していく。だが、世界はやはり理不尽だった……
犯罪の無い世界で2百年ぶりに出た犯罪者、「スケイプ」。
彼の半生を綴った作文を元に審議した結果、スケイプに科された罰とは。そして新たな生活で経験したのは……彼はある決断を下し、最後の作文を綴る。
3つの独立した物語が、たくさんの謎を散りばめながら同時に進む。それらが徐々に絡み合い、時に前後し、次々に謎が明かされて、気の遠くなるような壮大な結末へと収束していく。
……なんて書くと難しそうですが、とても読みやすくめちゃくちゃ面白い、胸躍る冒険活劇なんです!
7千年にも渡る謎、魅力的な登場人物たち、手に汗握る奇想天外な物語を、是非お楽しみください!
関川さんの小説を読んだ後は、いつも考えさせられます。
自分の解釈はあってるのだろうか? と不安になりながら(これは決して筆者の意図するところではないとは理解しているのですが)ストーリーを振り返り、セリフを振り返り、残されたメッセージを考えます。
いつも「読みやすく、世界に入り込めて、読後感のいい小説」であるがゆえに、単純に読んで面白かった、だけだともったいない気がして。
多くの話を書き、多くの話を読む筆者の苦悩、ストイックなまでに読者視点に立ち続け、アイデアを出し続け、こだわり続け、すり減らした筆者の魂が感じ取れる気がして。
作中のキャラクターに対する愛情、こだわりと情熱、あくなき向上心、書くことに対する楽しみと苦しみがどこから生まれるのか知りたい気がして。
そんな筆者のジレンマが表れているのがまさに今作なんじゃないかな? と思ったり。作中のストーリーテラーは全て筆者、関川二尋の分身であることに疑いの余地はありませんが、それぞれが悩みや思いのたけをぶつけ合った結果の完成度、という気がするのです。筆者の脳内ではきっと、繊細な関川、大胆な関川、そしてアイデアを出す関えもんによる、あーでもない、こーでもない、いっそのことぶっちゃけてみるか? やっちゃう? やっちゃえ! みたいな会議が繰り広げられていて、それを経由して「アトランティス⇨アトランティス」の旅が出来上がったんじゃないかな、と勝手に妄想してしまうのです。
今作は純粋に「読んで良かった」と思うとともに、これからも関川さんには傑作を生み出し続けていただきたいな、と、そんな感情を抱きました。
『アトランティス』の『つまようじ』。
この、一見すると結び付きのない2つの言葉が組み合わさったタイトル。
これだけで気になるし、もう面白そうでしょ?
面白かったですよ!! めちゃくちゃ面白かったですよ!!
天才的頭脳を持つ科学者たちが囚人として捕らえられた収容施設。そこからの脱走計画を主軸に、主人公・輝男の過去、そして未来の世界で刑の執行を待つ囚人、3本のストーリーが絡み合って進行していきます。
個性的な登場人物たちと、緩急ある展開に彩りを添えるどこか詩的な感情表現。
未知の大陸への夢と、科学の進歩の行き着く先と、人の心と。
キーアイテム『アトランティスのつまようじ』によって解き明かされていく謎に、読む手が止まりません。
壮大でロマン溢れる新時代の叙事詩のようでもあります。
ダイナマイトを発明したノーベルは、それが戦争に使われることを望まなかったはず。
素晴らしい技術も大きな力も、使い方によっては善にも悪にもなり得ます。
3つのストーリーが1つに繋がった時、人類の遥かな歴史と、その中にある織田輝男という1人の科学者の人生に、気の遠くなるほどの想いを馳せたくなることでしょう。
心の底から面白かったです!
本当に素晴らしい作品でした!