宇宙スケールの量子論的SF、と見せかけて……?

物質の大きさについて考えたことがあろうか。

私は子供の頃に「ゾウが自分の足を登ってくるアリに気付くだろうか」と考えたことがある。
逆に「アリは自分が登っているものがゾウの足だという事を知っているのだろうか」とも考えた。

大きさに限らず、全てのものは相対的な事に振り回されている。

それに気づいたのは幼稚園の頃だ。確か4歳だったと思う。
私は母に訊いた。
「100円って、高いの? 安いの?」
母はこう答えた。
「このゴマ一粒が100円だったら安い? このお家が一軒100円だったら高い?」

私はこの母の回答に『相対性』という概念を見出した。
勿論そんな言葉は知らないが、概念として『理解』した。

この物語に出てくることは『相対値』で考えられることがとても多い。
物質の大きさ、温度、美醜、幸福度、頭の良し悪し、強さ、実体と空想、社会的地位、人の価値観、善悪の判断……数え上げればきりがない。

『壮大なスケールで紡がれた科学者たちの脱走劇』というのが恐らくこの話の筋なのであろうが、実は読者の価値観が試されているのではないかという気もする。
――あなたは、この話をどう読みますか?……と。

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