壮大なスケールなのに、微小できめ細かい物語。

謎の大陸アトランティスをめざし
天才科学者たちが脱獄をする大きな物語を主軸として
3つの物語が語られ、次第に交錯していく。

一つは主人公テルオの幼少期から青年時代。
もう一つは過去か未来なのか誰なのか、最初は謎である。
丁寧に糸がほどかれ、明かされた秘密が全体を包み込んでいく。

随所に暴力への抵抗が描かれているのも読みどころ。
言葉の暴力、無視する暴力、殴り蹴る暴力。
暴力には暴力で返さないと気が済まない風潮の世の中で、主人公は決してそれを望まない。
それは負の連鎖になっていくだけだから。
平和のために、大切な人のために発明品を作っては、悪のための道具として使われていく悲しみ。
人の善意と悪意についても思いを巡らせてしまいます。

戦争のきっかけも小さな火種から大きくなっていく。小さいうちに消していきたいね。
それにしても、こんな荒唐無稽なお話、どうやって一人の人間から生まれるの?
作者さま、あなたは本当はラストに出てくる人物なのではないかしら。

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