過去、現在、未来に散りばめられたパズルピースを埋めていく壮大な脱獄劇

大作というのはこういう作品のことを言うのだろうと思います。

タイトルにもなっている「アトランティスのつまようじ」。
実際にはつまようじより大きな、ダイヤモンドでできた美しい物体です。
過去にアトランティス大陸と思われる場所でそれを見つけた主人公の天才科学者・輝男。
彼がこの物体に刻まれたスケイプという人物の記録を解読したところから、謎に包まれたアトランティス大陸の過去と現在、未来がつながっていきます。

そしてそのアトランティス大陸の歴史に非常に大きく関わるのが、物語の中心となっている輝男と二百人の天才科学者たちのドタバタな脱獄劇です。
天才ゆえにその才能から生まれた発明品を悪用された科学者たちは、表向きは快適な研究所である刑務所に集められ、閉じ込められています。
輝男もまたその研究所に三十年も閉じ込められていたのですが、アトランティスのつまようじに刻まれた記録を解読したことが発端となり、科学者全員を引き連れた壮大な脱獄計画を実行にうつしていきます。

天才科学者たちならではの発明品を使った脱獄劇は、多くの波乱を巻き起こしながら、ユーモアたっぷりに進んでいきます。
彼らは全員無事に脱獄し、アトランティス大陸へ辿り着けるのか──。

これだけ書いても作品の面白さ、素晴らしさを伝えきれないのが歯がゆいのですが、とにかく是非ご一読ください!
作者様独特の心地よいテンポと読みやすさに加え、至る所に散りばめられた伏線が気になってどんどん読み進めてしまうことでしょう。
そして、作品全体を包み込む大きな優しさの中に人間の愚かさや理想の社会へのメッセージがしっかりと息づいており、読み手の心に深い感動を与えてくれます。

ワクワクドキドキハラハラ、時に目頭を熱くさせながら、数千年に渡って散りばめられたパズルピースのような謎がカチリカチリと見事にはまっていく爽快感を楽しんだ先には素晴らしい読後感があなたを待っています。

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