不自由な世界で天才科学者が追い求めたのは人類の見果てぬ夢と希望

頭痛も歯痛も予防が大事。なら、戦争は?

暴力の最終形態が戦争なら、その痛みが表面化する前に未然に防ぐことは可能だろうか?

拝読しながらそんな突拍子もないことをつい考えてしまったのは、それだけこの物語が誰に対しても開かれているからかもしれません。まずは物語を楽しんでもらいたい、そんな作者さまの心遣いを作品の端々から感じました。

肩肘張らずに作品の世界に入り込める軽妙な語り口と、張り巡らされた伏線。
日常の中の小さな謎やロマンを追いかけるうち、少し不思議な物語はいつしか華麗な脱獄劇へと変身を遂げる。
次第に交錯する三つの物語の果てに見える世界とは――。

この作品の真ん中にはいつもアトランティスの秘密が横たわっていて、時代も場所も違う人たち(あるいはロボットたち)の心をひょいと壁をすり抜けるように繋げてしまいます。そんな物語の力を遺憾無く発揮した作品が書けるのは、やはり作者さま自身が物語の力を信じているからなのだろうと思います。

きっと独りでいたなら絶望で途方にくれてしまうような問題も、途方もない未来も、途方もない過去も。
なぜかこの作品に触れていると身近に感じられて、ついつい地に足つけて考えたくなる。
そんな少し不思議で、脱獄もので、魂に触れる、ひとつのジャンルに収まらないような多彩な魅力に溢れた作品でした。


ところで、この作品は私にとって出会いからして少し不思議な物語でした。
元々交流のある方たちのところで何度かすれ違っていたのですが、偶然、自作品でアトランティス伝説に触れる流れになり、かといってアトランティスとムーの違いもわからない私が書くのはいかがなものかと途方に暮れているところへ『アトランティスのつまようじ』というタイトルが飛び込んで来ました。

これはもう、読むしかないでしょう?✨

そんないろんな人を繋げる不思議な魅力がアトランティスにはあるのかなぁと思うと同時に、物語を愛する人のところにはやっぱり素敵な物語が集まるのだろうかと思った次第です。

このレビューを偶然見かけたあなたに、心から、オススメいたします✴️

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