その役者は夢をまことにせんと命をかけた。いな、ほんとうに死んでいたかも

レッドカーペットを軽妙に歩くその役者、立長吉幸。
芸歴22年になる死体役俳優である。
読者は冒頭からこんな不思議に触れるであろう。

『アカデミー賞死体賞って何やろ』

ほんとうに、謎である。

拝読しながらこんなことを思った。

『うつし世は夢、よるの夢こそまこと。そんな言葉があったな』と。

ふと思い立って調べてみたら江戸川乱歩。
なるほど、この作者さまにぴったりかもしれないと思った。

『セラの森』で美しい悲劇を描いた作者さまなら、
笑いあり涙ありの滑稽な喜劇もたしかに描けるだろうと思ったのだ。

退廃的な美しさを描ける人というのはある意味、
命尽きてなおその存在をいとおしく思っている。
そうした情愛の深さを、言葉の端々に感じた。

美しいとは突き詰めれば究極の他人事目線なのであろう。

その冷たささえ含むく客観的な眼差しで悲劇を眺めるとき、
美しさは悲劇の当事者にとっては慰めであり、夢であり、
包み込むような優しさでもあった。

本作はそんな美しい悲劇を綴った作者さまの描く、笑いあり涙ありのコメディであるという。

己の悲劇を他人事のように笑い飛ばせたらそれは立派なユーモアであり喜劇。

そんな言葉が脳裏を過るとともに、作者さまの描く新作が今から楽しみで仕方ない――。

そんな心持ちです(え?笑)。

この作品に触れていると、つい演じたくなってしまうような楽しさがあります。
安心して楽しめる。
そんな作者さまへの信頼は、
今後Web小説において読者が作品を選ぶうえで大きな基準となっていくのではないでしょうか。

連載をリアルタイムタイムで追いかけながらワイワイ楽しめるのも、カクヨムコンの魅力の一つではないかなと思います。
私も続きを拝読できるのが今から楽しみで仕方ありません。

ぜひ、あなたも一緒にどうですか?✴️

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