マデラインと四人の目~最大多数の最大幸福と、どう向き合うのか?

まず文章を読んで、僕は芳醇な海外小説の香りを覚えた。

著者の読書経歴やパーソナルな部分は把握していないが、物語同様に英文学などに深い知見と親しみがあるのだろう。
なぜならば、洗練された様式美をそこに感じたからだ。
まるで、上流階級者の子女が仕込まれるマナーのような。それは、ある種の高潔さすら受け取れる。

言うなれば、歴史小説という大衆文芸の中の純文学ではないだろうか。

こうしたものを書ける著者に、僕は羨望を覚える。
今の、僕には書けない。僕の文章が荒々しいマルセイユの悪童だとすれば、著者の文章は絢爛豪華なベルサイユで注目を浴びながら、謀略渦巻く中でも生き残る腹芸が出来る女性。
つまり、それぐらい凄いのです(笑)

さて――。

物語はマデラインと四人の目で進む。
小劇場で演じられる、ワンシチュエーション・ドラマを想像する判りやすいと思う。
そして、序盤は女性グループの人間関係、それが次第に屈折を帯びたものになっていき、最後は政治問題に絡む。

ここで語られる事は、「最大多数の最大幸福と、どう向き合うのか?」にも通じると思う。
誰かが豊かに暮す為には、誰かを犠牲にしなければばらない世の中であり、それは今も昔も変わりはない。
そうした中で、社会システムを変革しない限り、我々はせいぜい搾取される「だけ」の側にならないよう頑張るしかない。
そこが、グウェンドレンとマデラインの考えの違いであり、友情を壊す要因になったのだろう。

そして、あと一つ。
この物語は大きな教訓を示した。

「政治思想が絡むと、人間関係は破綻する」


ん。

だから、職場や飲みの席で政治ネタ(宗教含む)は御法度なのだ。
気を付けようね、新成人諸君!グウェンドレンとマデラインにならぬように。

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