第三幕:矛盾
「死刑制度についてどう思う」
「肯定派か否定派かということか?」
「違う。まったくあなたは典型的な一般人らしい」
「…それは申し訳ないね」
「ではチャップリンの『殺人狂時代』を観たことは」
「…無い」
「セリフを知っているか?有名なものだ。一人殺せば犯罪者で…」
「…知らない」
「はぁ~。しょうがないな。一人殺せば犯罪者で、百万人殺せば英雄。数が殺人を神聖なものにする。『殺人狂時代』に出てくるセリフだ。元はベイルビー・ポーデュースというイギリス人の言葉だ」
「…それが?」
「死刑は許されるのか?」
「…まあ現状日本では容認されている」
「そうだな。では個人的な復讐は?例えば、いじめられ自殺した子供の父親が、いじめていた子供たちを皆殺しにした。これは?」
「許されるわけないだろ!なあいい加減にしてくれよ!一体何の話を」
「完全黙秘してもいいのか」
「………」
「よし。復讐は許されず、死刑は許される。いずれも、ある攻撃に対しての反撃だといえる。二つは何が違う?」
「………数だ」
「何の」
「殺人者の数だ。復讐は個人的なものだが、死刑は国民の総意で行っている」
「…ほう、あなたは存外賢いようだ」
「しかしだな!死刑というのは復讐という個人のエゴイスティックな行為とは違う!きちんと法整備がされていて、証拠をきちんと精査して」
「それで?それで、冤罪はいくつあった。逆に、裁かれなかった悪人は何人いる?それに、そのきちんとした法律とやらは誰が決めているんだ」
「…」
「他ならぬ人間だ」
「………」
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