第四幕:論点

「…それで、何が言いたい」


「私は別に、司法批判をしたいのでもないし、死刑反対論を唱えたいのでもない」


「はっ、そりゃ良かった」


「ふふ…。……問題は、死刑が殺人ではないかのように感じてしまう人々のことだ」


「…どういうことだ」


「人が人を殺す。それ自体に違いはないだろう?」


「…だが、だからこそ法的手続きがある」


「村田さん、論点をはっきりさせようか」


「え?」


「私は今、、について語っているつもりだ」


「…殺人の正当化」


「そうだ。続けていいかな?」


「……」


「…続けよう。他にも殺人の正当化の手段はあるぞ。例えば戦争だ。戦場では。なぜならそれが当たり前だからだ。撃破とか、殲滅とか言われることになる」


「……」


「また、こんな方法もある。正当防衛だ」


「それは」


「あなたは今、とても危険な状態にあります」


「…何?」


「聞け。もう今にも空腹で死んでしまいそうです。それもそのはず、あなたはもう一ヶ月も何も食べていないのです。このままでは本当に餓死してしまいます。おや、あんなところにハンバーガーを食べている太った子供が居ますね。あなたはその子供にハンバーガーを分けてくれといいます。ところが子供は後ずさって絶対に分けようとしません。これは困りました。追いかけて奪ってもいいですが、あなたは飢餓状態でもうほとんど体が動きません。おや、ラッキー!あなたの手には拳銃があるではありませんか!」


「…」


「さあ、あなたならどうする」


「…子供を撃てと?」


「撃ったら生き延びられるだろうな…それとも自分の頭を撃つか?」


「ああ、そうしたいね」


「おめでとう!あなたは自分を殺すことで苦しみから解放されました。結局あなたは。おしまい」


「………」


「どうした。自殺は殺人ではないとでも言いたそうだな」


「………」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る