概要
両性具有のオムホロスは自らの身体を作り上げている片割れを探し、師匠である魔術師との戦いに挑むことになる。敗北か勝利か。……敗北は死。
オムホロスは、モロ神に囚われたゴドウの魂を救い、魔術師から仕掛けられた罠を解くために、ケセオデールに近づく。
一方、北の国ケラファーンの王女、ケセオデールは自分の性への違和感に悩み、また、女に欲情することに苦しんでいた。城の侍女と情事を重ね自分から奪われたのは男性の象徴、ファルスだと悟る。王女はファルスの在り処を求めてケラファーンを出る。
そのふたりが、出会うことになり……そして、王女は自分の敵を知る。
ファルスを取り戻し、復讐を果たすためにキメラの島を目指して。
オムホロス・・・ホムンクルス。錬金術師であり魔術師
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!単純な言葉では表現できない生々しく鮮烈で激しい息遣いと陶酔
「ホムンクルスやキメラという言葉にどういったイメージを抱いているか」によって、この作品への入り方、感情移入の度合いが相当変わってくるのかもしれません。
実は私、第一章を読むのに時間がかかりました。
錬金術や神話についてのイメージはもちろんのこと、生物学的な知識(特にホモ・ヘテロなどの性染色体の知識)、と興味(特に子の性別の決定には精子側が関わってくる、という話など)が問われるのかもしれません。
しかし、そういった背景にファンタジー小説として展開されるのは、さらに想像力を掻き立てるストーリー。
「完全ではないもの」である主人公が「完全になるため」の試練を乗り越えるための地図の上での旅行…続きを読む - ★★★ Excellent!!!身体の性に違和感を抱く王女は、奪われたファルスを探す旅に出る。
キメラの島に住むオムホロスは、自らがホムンクルスであると知る。
ホムンクルスは孤独。オムホロスの元となった者は、どこにいるのか。
北国で王女として育つケセオデールは結婚を控え、何かが違うと感じていた。
第1章は、少しずつ読んでいたのですが。
第2章でケセオデールが登場してからの、物語の吸引力が凄いです。
許婚が嫌いなわけでも、結婚が嫌なわけでもない。でも、しっくりこない。
夫に抱かれても何も感じない戸惑いと、女性に欲情してしまった瞬間の衝撃。
心理描写に引き込まれ、目が離せません。
失ったものを取り戻すため、ケセオデールは旅に出ます。
世界の命運がかかったりはしない、あくまで個人の根源を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!大人へ変化する時の心の震えをとらえた見事なハイファンタジー
大人向けハイファンタジーとして緻密かつミステリアスに作られ、且つ年頃の少年(少女)が大人へと変化していく時の心の震えを、そのファンタジーの中で見事にとらえた作品でした。
大人へと変わっていく自身の体の変化や、自分が何者なのかという疑問を模索しようとし始める心。
そういったものが淡々とした語りの中で鮮明に輝いています。
また、ファンタジー設定そのものが、そういった変化と密接に関わるように作られていてたいへん面白いです。
「自分の正体」が物語の謎そのものでもあるため、オムホロスとルー(ケセオデール)がそれぞれの戦いや旅を通して答えに近づいていく様にはぞくぞくとするものがあり、読めば読むほど目…続きを読む