身体の性に違和感を抱く王女は、奪われたファルスを探す旅に出る。

キメラの島に住むオムホロスは、自らがホムンクルスであると知る。
ホムンクルスは孤独。オムホロスの元となった者は、どこにいるのか。
北国で王女として育つケセオデールは結婚を控え、何かが違うと感じていた。

第1章は、少しずつ読んでいたのですが。
第2章でケセオデールが登場してからの、物語の吸引力が凄いです。
許婚が嫌いなわけでも、結婚が嫌なわけでもない。でも、しっくりこない。
夫に抱かれても何も感じない戸惑いと、女性に欲情してしまった瞬間の衝撃。
心理描写に引き込まれ、目が離せません。

失ったものを取り戻すため、ケセオデールは旅に出ます。
世界の命運がかかったりはしない、あくまで個人の根源を探す旅。
ですが、神々と対峙し、描かれる世界のスケールは壮大です。
太陽の昇らぬ冬に閉ざされるケラファーン。
報酬を求める神ツァカタンの国カタルガ。
ケセオデールの母の優美な祖国ビオリナ。
そして、むせ返るような熱帯の島ネクアグア。

神話の中に入って旅しているかのような、ハイファンタジーです。

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