単純な言葉では表現できない生々しく鮮烈で激しい息遣いと陶酔

「ホムンクルスやキメラという言葉にどういったイメージを抱いているか」によって、この作品への入り方、感情移入の度合いが相当変わってくるのかもしれません。

実は私、第一章を読むのに時間がかかりました。

錬金術や神話についてのイメージはもちろんのこと、生物学的な知識(特にホモ・ヘテロなどの性染色体の知識)、と興味(特に子の性別の決定には精子側が関わってくる、という話など)が問われるのかもしれません。

しかし、そういった背景にファンタジー小説として展開されるのは、さらに想像力を掻き立てるストーリー。

「完全ではないもの」である主人公が「完全になるため」の試練を乗り越えるための地図の上での旅行、駆け引き、完全なるものに近づくにつれ、生まれる欲望。

そして「完全ではないもの」を生み出したものの正体、その意図。

男の私のイメージがこの作品のメッセージの全てを理解できているかどうか自信はありませんが、作品の背景に垣間見える「女性の思い描く情愛や愛憎」とはこれほどまでに強烈なものなのか、と恐れながら読ませていただきました。

「読者を選ぶ」ようなことを書きましたが、しかしそれでも多くの方にこの「単純な言葉では表現できない生々しく鮮烈で激しい息遣い」を味わってほしい、そう思うのです。

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