概要
『気づくことができなかった秘愛を、時の反対側で知る――』
1.『花弔封月《かちょうふうげつ》』 『冬』
葬儀屋の娘・黄坂千月《こうさか ちづき》には秘密があった。それは記憶が一日しか維持できないことだ。
彼女は前日の日記を頼りながら仕事をこなしていく。不都合なこともあるが現状を受け入れ懸命に生きている。彼女には救い出さなければならない人物がいるからだ――。
2.『月運花馮《げつうんかふう》』 『春』
花屋に務めている緑纏凪《ろくまと なぎ》は季節とは違う花を挿していた。春には秋の花を、秋には春の花をだ。
大切な人の時を巻き戻すため、彼は今日も季節を逆転させる――。
3.『花弔封影《かちょうふうえい》』 『夏』
黄坂千月の妹・黄坂千鶴《こうさか ちづる
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!花と月が纏う深い愛の物語
美しい日本語で紡がれる魂の物語です。
流れるような文章で清らかなこの物語の世界に引き込まれます。
主人公をはじめ、彼女をとりまく周囲の人物のひとりひとりが誰かを想い謎を秘めています。
それらの絡み合った糸のような謎や想いがほどけていくにつれて伝わってくる人を想う強烈な心。
最終章の最終話の最終行を読み終えたときに心に残るもの。
人はこんなにも深く想えるものかと。
人はこんなにも深く愛せるものかと。
本来ある花と月を用いた四字熟語の意味を踏まえつつ
漢字を置き換えて新たな意味を持たせ、物語に添わせる。
その作者の意図たるや圧倒的です。
行間から語りかけてくる作者の熱い想い。
「こ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!五年ではなく人生です【大作★4】
第三章まで拝読しました。その第三章で作者様は『精神とは人生です。その人が培った経験はどこにもいきません。全て周りの人に受け継がれます』というお言葉を書かれています。私はこのご作品を『人生』だと感じた矢先に目を通したのです。そこで私は『あぁ、つまりこのご作品は作者の精神そのものであり、受け継がれるものなのだ』と。小説という名の精神を覗いているのだと自覚しました。作者様はどのようにお考えか分かりませんが、私はそのように受け止めることができました。
清らかで哲学的なお話、優しさ溢れるミステリー、凛とした花言葉。そのどれもこれもが作者様の人生で精神です。皆さまも少し覗いてみてはいかがでしょうか。 - ★★★ Excellent!!!濃密なドラマ、複雑なミステリーを織り込んだ渾身の作品!
素晴らしい作品でした。
連作短編のような構成をとった、ミステリーと濃密なヒューマンドラマを絡めた非常に読み応えのある物語です。
記憶が一日しかもたない「千月」という女性を主人公に、妹、幼馴染、死に別れた恋人などが、重厚なドラマを展開していきます。各物語はそれぞれ独立したミステリー仕立てとなっており、バトンをつなぐようにキーとなるキャラクターの物語が語られていきます。さらに物語全体を通して千月の抱えた秘密がミステリーとして存在し、複雑ながらも読みごたえのある構造になっています。
構成の上手さはもちろんですが、奥行きのあるキャラクター造形、読みやすい文章、過去と未来を自由に行き来する軽やかな語り…続きを読む