土佐 鏡川の龍 

太田 護葉 (おおた まもるは)

第1話 節分思案

 本日は、立春大吉 節分である。


土佐路に春がやって来た。


遠く西の空、山あいを眺めると、寒かった冬の、名残りを惜しむかのような

白い残雪が、山頂に、わずかだけ残っている。


 鏡川は、ひたすらに浦戸湾をめざし

いつものような、さらさらとした清水を

送り続けている。


さぞかし水は、冷たかろう・・・。


清く あくまでも純粋に 

時の流れに逆らわない

いい流れであるなあ・・・。


もの言わぬ鏡川に

人々は、尊敬の気持ちを込めながら

日々感謝して暮らしている。


 この澄み切った土佐の大気は

背後にそびえる四国山脈と

今、目の前を流れる鏡川

そして、土佐湾が作り出して呉れている。


全ての幸は、土佐の大自然の賜物である。


 幸と書いて、こうと読む。

土佐本町筋 町人郷士 坂本家の長女である。

夫は、潮江から養子に来てくれた山本常八郎

通称を長兵衛と言う。


この二人 昨夜からの長丁場である。


相談事がどうしても、まとまらず

このままでは、家人にも怪しまれる。


長兵衛は、思い余って幸を誘い

二人して、鏡川沿いの散策を始めた。


きょうは、風も無く、きわめて穏やかである。


堤では、何とかして凧を揚げようと

親子連れが苦心惨憺 走り回っている。

それをニコニコしながら眺める

母と娘 


その横を歩きながら、長兵衛が切り出した。










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