第19話 まろやかな温度差
穏やかで、ゆったりした海の感覚
激しない、優しさに包まれる感覚
その海に注ぐ清らかな水
その水の中で、自由に泳いでいる感覚
その何とも言えぬ快さが、微妙に変化するのは
何故だろう?
龍馬の感じる温度差のようなものは
どこから湧いてくるのか?
母の温度と、乳母の温度の微妙な差
龍馬は、幼いながらも、既にそれを
感じ取っていた。
いずれも自分に害を為すものではなく
誠に心地よいものであるが
何かが違うのだ。
その点では、誠に感受性の鋭い赤ん坊であった。
幸は、授乳の時以外は、離れの自室で
龍馬をあやし、チビと一緒に寛ぐ。
土佐の春の日差しは、母子をやさしく包んでいた。
4人の子を育てた幸であったが
龍馬は、まるで初めて授かった赤子のような気がした。
何があっても、何が起きても、この子だけは
自分の子!と言う意識が大きく幸に働いている。
・・・離すまいぞ。この子は、私が命を懸けて
産んだ子・・・。
朝一番に
「幸! きょうは、ぬくいき、龍馬を連れて、天満宮へ行かんかよ」
長兵衛が元気な声を掛けて来た。
久しぶりの外出である。
幸は何やら心が弾んだ。
鏡川の水面は、きらきらと輝いている。
風が心地よい。
長兵衛に抱かれた龍馬が、空を見て、目をキョロキョロさせている。
土佐の青空が、思い切り龍馬を迎えている。
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