第24話 朝の鏡川

 爽やかな秋の冷気の中、非番の日の夜明けに 

長兵衛は、四歳になった乙女と、一歳を迎えた龍馬を連れて

鏡川の堤を散歩した。


川面が、太陽の光を反射して、きらきらと光り

優しく三人を迎えてくれた。


 時代は、いまだ本格的な幕末には至っていないが

何かこの先、今までのような平和が続かない予感は

十分あった。


時代は大きく変わる!

間違いなく変わる。


長兵衛はそう感じていた。

果たして、この子達を自分は、守れるか・・・。


 他の子供は、大きく立派に育ってくれた。

遅くに産まれたこの二人が成人するまでは

自分が何としても、守っちゃらんといかん。


 幸の体調不良は、まだ続く・・・。

土佐藩医から、そう告げられた長兵衛は

自らに気合を入れた。


大きく深呼吸をして

夜明けの太陽に祈った。


 父に抱かれた龍馬は、まぶしい太陽を避けて

川面を見ている。

彼にとっては、産まれて初めての鏡川である。


 父に寄り添う乙女は、男の子のように

胸を張って、太陽を睨みつけている。


「乙女 龍馬を頼むぜよ」

「うん わかった。龍馬は、あてにまかせて」

「うーーん、心強いのう」

「うふっ!」


朝日を受ける三人を、鏡川が優しく、見つめている。













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