第29話 時代の変化の波
その後も龍馬は、長兵衛に連れられて
乙女と共に何度も種崎の海に行った。
相変わらず波に恐怖を感じる龍馬であったが
もうひとつの苦手は、海水の塩分であった。
乙女に言われて、渋々、顔を水に漬けてはみたものの
辛い!塩辛い!どがらいのである。
「くえーーーっ!」
思わず吐き出す龍馬。
「りょうま!海の水は、しおからいけんど、すんぐに慣れるき
我慢しいよ」
乙女は、優しく気遣ってくれるが、その塩辛さには閉口した龍馬であった。
それでも、二人が仲良く磯遊びをしてくれるので
長兵衛は、心が安らぐ心地であった。
・・・この二人が、おせになるまでは、自分も、きばらないかん!
自分に言い聞かせて、日々精進する良き父親であった。
土佐の海の良さは、何にも増して海の藍色である。
種崎海岸から桂浜、遠くは東に羽根岬、室戸岬
西に須崎、横浪海岸 土佐湾が一望出来る。
そして、爽やかな海風!
さんさんと輝く太陽!
遠く、あくまでも遠く南に広がる太平洋!
しかし今、この心安らぐ土佐の海の向こうには
大きな大きな時代の荒波が押し寄せようとしていた。
龍馬は、ただ単に波におじいたわけではなく
本能的に大きな敵の来襲を感じたのやも知れぬ。
長兵衛は、何となくそう感じた。
基より武芸百般、誰よりも厳しい修行を重ね
自身の心身を鍛え抜いて来た長兵衛であったが
もはやそれのみで戦えぬ時代の大きな変化を自身
強く感じていたし、その予感はまもなく的中する。
今まさに土佐の国も、その大きな大きな時代の変化の波に
翻弄されようとしていた。
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