17人目 ハンラッキー

「おめでとうございます! あなたは当店1539878人目のお客様です!」

ある週末だった、たまに行くスーパーに入店すると、クラッカーの音とともに盛大に祝われた。 俺は祝われた理由がまったく理解できなかった、なぜこんなに中途半端な人数で祝おうと思ったのだろうか、そもそもこのスーパーに通算約154万人が来店していたというのが地味に驚きだった。

「運がいいねあんちゃん、いや本当に」

見知らぬ中年男性に背中を叩かれる、店員から17枚綴りの「9%割引券」を貰う。

運がいいなどと言うが、なぜ祝われたかもなぜこの中途半端な特典を貰ったのかも分からずじまいでモヤモヤしたまま店員たちはさっさと元通りの場所に戻っていってしまった。

 * * *

家に帰ると、郵便受けに大きな封筒が突っ込んであった。

「なんだこれ」

取り出してみると、大きな文字で「当選おめでとうございます」と書かれている。

差出人は書かれていないため、怪しみつつも開封してみる。

中身はたまに読む漫画雑誌の連載作品の単行本、それの3巻だった。

他に何も同封されていなかったため何に当選してこれを貰ったのかも分からない、たまたま少しだけ好きな作品だったためラッキー程度には思うが、正直3巻だけ渡されても困る。

「いかがでしょうか、当社のアンチアンラッキーシステムは」

突然声をかけられてビクッとして振り向く、胡散臭い笑顔が張り付いたような若いサラリーマンが立っている。

「アンチアンラッキーシステム?」

「ええ、当社では不運アンラッキーが降りかかるであろう人物の不運アンラッキーを打ち消すシステムを独自開発しまして、あなたをテスターとして使わせて頂いた次第でございます」

「打ち消すって、それならせめてもうちょっといい感じに」

「本日朝の星座占いはご覧になられましたか?」

見たけど内容なんていちいち覚えちゃいない。

「水瓶座のあなたは6位、そこそこの1日になることでしょう……ちょうど12星座の真ん中あたりですね、不運アンラッキー半運ハンラッキーにしたのでございます」

残り数時間ですが半運な1日をお楽しみくださいと言われ男に小さなカードを渡された。

300円程度使った形跡のある600円のクオカード、なるほど、半運だ。

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