10人目 サプライズ
誕生日、それは、自分が生まれた日であり、祝うべき素晴らしき日でもある、だが俺にとってその日は忌まわしき日でもあるのだ。
同僚が毎年仕掛けてくるタチの悪いサプライズ、今年はまた一層タチが悪いようだ。
「死にたくなければ、おとなしく、静かに中に入れ」
銀行で一仕事終えて家に帰ると、見知らぬ男が玄関で待ち構えていて、扉を開けた俺に銃を突きつけてきたのだ。
「またサプライズだろ、おいS、どこに隠れてやがる」
どうせ部屋に潜んでいるのだろうと思い呼びかけるが、返事が無い。
「何ワケの分からない事を言っている、殺されたいのか?」
拳銃を持つ男の手は震えてる、演技にしても、コイツは強盗に向いていないんじゃないかと、俺は心の中で笑った。
何にせよ今日は俺の誕生日だ、ずっとこのままというわけにはいかない。
「よーしそこまで徹底するつもりなら騙された事にしてやろう、何が目的だ?」
「騙された? 何の話だ、お前今の状況が分かってんのか?」
男は怪訝な表情で俺に銃を突きつける、演技は一級品と言ったところか。
「だから、俺の誕生日にサプライズ要員としてSが用意した強盗役だろ? アイツほんと趣味悪いな」
「ええい面倒だ、いいから大人しく中に入れ!」
ダァン! 銃声が響き天井から漆喰の屑が降って来た、本物の銃だ。
「本物の銃か、するとお前は本物の強盗ということか?」
「ああそうだ、やっと状況が飲み込めたようだな」
強盗がニヤリと笑い手招きをする、中に入れということだろう、あぁ、これから金品を要求されたりするのか。
「さっきお前誕生日とか言ってたけど、運が悪かったな、誕生日に強盗に会うなんてよ」
「そりゃお前も同じだろ、お前、最高に運が悪いぜ」
居間に辿り着いた俺は懐から例のブツを出した。
「同業者の家に強盗に入るなんて、なんて不幸な人間なんだお前は」
銃口を向けられた強盗は、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「さっき銀行で4人は殺して来た、今更自宅に死体が1つ増えたところでどうってことはないさ」
腰を抜かして怯えた目でこちらを見上げる強盗の前で俺は満面の笑みを浮かべた。
「強盗は始めてか?」
「は、はい、実は」
「そうか、来世では上手くやれよ」
金属が擦れる音と共に硝煙と血の匂いが部屋に満ちた。
「サプラーイズ、誕生日おめでとう、俺」
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