2人目 いつもと違う
いつも俺が座る席に、今日は違う人が座っていた。
「あ、ここ君の席だったっけ」
変な機械を開いていたその男は俺の視線に気付くとそう言った。
「いえ、別に専用ってわけじゃないんで」
そう言って俺は1つ空けた隣に座り、いつものコーヒーを頼んだ。
そういや、この男を見るのは今日で初めてなのに、何故俺があの席にいつも座っていたのを知っているんだろうか。
「君は、最近この街に何か異変を感じなかったかな?」
変な事を言う男だ、この街はいつだっていつもと同じだ、言うならばこの男こそが異変ではなかろうか、たまに旅行客に変な事を訊かれたりはするがこんな事を訊く奴は初めてだ。
「異変なんてありませんよ、何を変な事を」
それを聞いて男は身を乗り出した。
「そんなはず無いんですよ! 何か些細な事でいいんです! こう、普段置いてある物が崩れてたり、消えてたり……」
「だからありませんって、全部何もかも、いつも通りの街ですよ、あなた以外全部ね」
そうかぁと呟き男は頭を掻き妙な機械へと向き直った。
「何なんですかソレ、その絵、動いてません?」
男は機械の正面をこちらに向ける、板のような部分に、細かい絵が描かれていてそれが周期的な変化を見せていた。
「ノートパソコンって言ってね、僕はコレを使ってゲームってのを作ってるんだ」
よく見るとその絵はこの街の地図を簡略化したもののようだ。
「本当に妙な奴だな、そのゲームってのはどんなものなんだ?」
「君らに言っても分からないだろうな」
男の言葉にムッとする、そんな事を言われると意地でも理解したくなる。
「まぁ次は、理解できるように作っておいてあげるよ、今回はどうにも不具合が多すぎた」
男が機械をパタンと閉じて立ち上がった。
「最初から作り直すとするか」
その機械から聞こえた音が、遥か頭上からも聞こえた気がした。
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