第10話 亜車の追憶

 あれは約五年前、連続殺人事件の捜査が難航していた頃のつきの雨の日だった。その日も合同捜査本部の現場班は各自わかれ、その中の本庁くるま班も容疑者候補の動向を張り込んだ。


「捜査33日目。」


 俺と木更津は夕立が降る中、ある容疑者候補の勤務先付近を交代交代こうたいごうたいで張り込んでいた。それは俺が車外でカッパを着ながら、容疑者が勤務先から車で出かけて行く姿を確認して、覆面パトカーで尾行しようとした矢先の出来事だった。

 あらかじめ、容疑者候補が勤務先から外出すれば覆面パトカーで尾行することが決まっていた。しかし覆面パトカーに戻るも、木更津の姿はなくなっていた。車内の鍵は、いていた為、最初は車外の俺を探しに行ったのかと思っていた。だが警察無線に反応はなく、状況が一変する。

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