第09話 悪魔の証明2

「二つ目は、木更津警部補の性別情報の件についてです。この件についても、物証はあります。これは自分が事件に関するあらゆる記事をファイリングしたものです」

 そう言って、亜車が引き出しから取り出したのは黒いファイルだった。そのファイルを開くと、ファイリングされた事件に関する全国紙や地方紙の新聞記事。そして木更津警部補殉職の記事も貼ってある。ベテラン刑事が、約五年前の色せた各新聞の第一報記事の文章を一語一句、よみ渡すが性別に関しては全く書かれていなかった。第二報や第三報その他の関連記事を読んでも、やはり性別の件については書かれていなかった。何回、読み直しても書いてはいない。

「これで王手だな。」

 ベテラン刑事が、そう一言つぶやいた。

 そして亜車は最大の疑問をベテラン刑事に問いかける。


「そして何よりも、当時の本部捜査一課亜車班に木更津警部補が所属していた事を部外者の大学院教授は何故なぜ、知っていたのか?」



亜車の問いかけにベテラン刑事は、天井を見上げながら目をつむると長らく沈黙ちんもくした。



「持ってけ泥棒。」

「嘘つきは泥棒の始まりですよ」

 捨て台詞を吐いたベテラン刑事から警察手帳の紙切れに書かれた大学院教授の連絡先をもらうと、そう言い返しながら亜車は再び外へと出かけて行った。

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