第01話 ある人へ会いに

 俺は現状報告書を提出した後、"ある人"へ会うために"ある場所"へ立ち寄った。そう東京拘置所だ。捜査の合間に面会の申請を取っていた。程なくして審査を幾分いくぶん、待たずに許可は下りた。なぜなら、今から会いに行く最重要人物は、約10年前に俺が逮捕した日本で一番まわしい惨劇サンゲキである"大神オオガミ事件"の死刑囚だからだ。

 彼女の名前は、大神おおがみこと。その年齢は、今年で二十歳。約10年前、当時十歳にして更正不可のちょうほうてき措置そちによる日本司法史上最年少の未成年者死刑囚となった。当時、大神家の長女だった大神真琴死刑囚は常日頃から家族全員を虐待しており、家族の心理を操作した挙げ句、身内間で殺し合いをさせて最期は自らの手で衰弱した一家全員を皆殺しにした。司法解剖の結果、大神一家の遺体からは大神真琴死刑囚が毎日、家族に食べ与えていた腐った食べ物が体内から検出されたという。

 大神家へ臨場した際に通報者である血まみれの白ワンピースを着た長い黒髪の少女がベテランの捜査員ですら目をおおうような凄惨せいさんな現場の中で一人、笑っていた。最初は何者かに家族全員を殺害されて気が動転していると誰しもが思っていたが、笑いながら言い放った少女の一言で当時、現場に到着していた俺を含む捜査員達に衝撃が走った。それは無邪気な凶器狂気だった…。

「お前ら全員のココロを操ってろうか?」

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