『HELL GONE.~亜車刑事と死神教授~』

新庄直行

HELL GONE.~亜車刑事と死神教授~

第00話 本件の概要報告

 これで三件目となる連続殺人クッキング・シリアルキラー事件だが、被害者には共通点がなく年齢もバラバラで、犯人の動機も未だ不明。現場近くの防犯カメラを調べるも、犯人らしき人物は特定できず、例の如く現場の部屋も毎回の様に密室状態で発見される。

 凶器の刃物は市販の料理包丁で、犯人が持ち込んだと思われる。その凶器は事件後に犯人が毎回、持ち帰っている。臨場した鑑識が調べた結果、まな板及び台所周りからルミノール反応が検出され、被害者宅の台所にある文化包丁からはルミノール反応が検出されなかった。検出結果は共に被害者の血液反応。鑑識係の見立てでは犯人が被害者を刺殺後、被害者宅の冷蔵庫にある材料と凶器の刃物を使い調理をする。要するに遺体がのテーブル椅子イスに座った状態で、それから事件に使った凶器の刃物で何かしらの料理を調理をする。そして調理した料理を被害者の前に出し、その場から立ち去る。なお調理された料理の種類は各種、古今東西で犯人の解明にはいたらず…。しかし、この三つの事件には、共通する点が二つある。

 先ず一点目は、茶碗や皿に盛られていた白飯ライスはしやスプーンまたは御数オカズにフォークとナイフが突き立てられていたことだ。それが被害者のダイイングメッセージではなく、犯人がおこなった所業だという事は明白だった。その箸やスプーンほかは寸分の狂いなく、上から直立に突き刺さっていたからだ。もし仮に被害者のダイイングメッセージだとすると死に物狂いで何か爪痕つめあとのこそうとするため、必然的に盛られた白飯は当然のごとく崩れる。そして三件とも、綺麗に突き立てられている。すなわち、被害者の死後に犯人が何か儀式的な意味合いで箸やスプーン、フォークやナイフを盛られていた白飯に突き刺した可能性が極めて高い。

 そして二点目は、被害者が両ひじを突きながら手を合わせて合掌している件について。鑑識によると、死後硬直が腕に回る絶妙なタイミングで、合掌のポーズを作っているという事だった。この状況から料理を調理している最中だという事も判明した。このことからプロファイリングで推測されるのは、死体に見識がある人物が犯人だという事だ。

 これが仮に被害者へのとむらいだとしても、決して謙虚な犯人とは思わない。何故なぜなら、被害者をあやめている時点で少なくとも謙虚ではないからだ。現状報告は以上。くるま けい

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